Techno
1980年代のデトロイトで生まれた、機械が打ち鳴らすダンスミュージック。歌よりもリズムの反復で人を踊らせる。クラブで長く回されることを前提に作られた音楽だ。
What it sounds like
兄弟ジャンルであるハウスに比べ、音はより冷たく機械的だ。テンポは1分間の拍数(BPM)で125〜140が中心。4分音符を等間隔に踏む「四つ打ち」キックが曲頭から終わりまで一定で続き、その上にハイハットの細かい刻み、シンセサイザーの短い反復フレーズ(リフ)、既存の音を切り取って素材にしたサンプリングが重ねられる。ボーカルはあっても断片的で、ないことも多い。シンセの音色は金属的で、ときに刺々しい。反復のなかで、重なる音の層(レイヤー)が少しずつ入れ替わっていく——その移り変わりこそが聴きどころだ。曲の長さは5〜8分が標準で、DJがミックスしやすいように設計される。クラブの大型サウンドシステムで再生されることを前提とするため、低音は重い。音作りの核となるのは、Roland TR-909 などのドラムマシンとシンセサイザーである。
The signature rhythm pattern of this genre. Press play to loop it, and follow the score below to see which beat is sounding.
How it came about
1980年代半ば、米国デトロイト郊外のベルヴィル。Juan Atkins、Derrick May、Kevin Saunderson の「Belleville Three(ベルヴィル・スリー)」が、ドイツのクラフトワークやイタロ/ユーロディスコ(ジョルジオ・モロダー)といった電子音楽、そしてファンク(P-Funk)などに影響を受けた。荒廃した工業都市デトロイトと、その先に思い描いた未来都市の姿を、音で描こうとした。ジャンル名「テクノ」が定着したのは、英国の Neil Rushton(Virgin傘下の10 Records)が選曲・構成し、1988年に英国で発売されたコンピレーション盤『Techno! The New Dance Sound of Detroit』だった。当初は『ハウス』を冠する案だったが、Juan Atkins の収録曲「Techno Music」を機に、スタイル全体を指す名として『テクノ』へ改題されたのである。1990年代前半には、Jeff Mills や Underground Resistance(アンダーグラウンド・レジスタンス)らが音を削ぎ落とし、より速く抽象的な方向へ推し進めた。やがて舞台はベルリンへ移る。壁崩壊で空いた旧東ベルリンの廃工場が、世界中のクラブやレーベルの拠点になった。1991年に開業したクラブ Tresor に続き、2000年代には Berghain が「テクノの聖地」と呼ばれるようになる。
What to listen for
四つ打ちのキックの上で、ハイハットやベースライン、シンセのリフといった音の層が重なる。それらが、どのタイミングで現れては消えていくか——その移り変わりに耳を澄ませてみたい。「ブレイクダウン」(キックが消えて緊張が高まるパート)と「ドロップ」(再びキックが戻る瞬間)の構造も聴きどころだ。DJミックスでは、隣り合う2曲がどう重なるかも音楽の一部になる。
If you only hear one thing
迷ったらまずこの1曲、Juan Atkins (Model 500)『No UFO's』(1985)。テクノはここから始まった。さらに聴き進めたい人には三つ。ベルリン的なミニマルの典型は、Robert Hood『Minimal Nation』(1994)——引き算の美学そのものだ。日本の代表例なら、KEN ISHII『Extra』(1995)で硬質なメロディの冴えを。今のテクノを知るなら、Charlotte de Witte『Doppler』(2018)に現行シーンの鼓動がそのまま鳴っている。
Trivia
「テクノ」という言葉について、Juan Atkins は高校の授業で未来学者アルビン・トフラーの著作に触れ、『第三の波(The Third Wave、1980)』にある造語「techno-rebels(テクノ反逆者)」から着想を得たと語っている。主要なジャンルの名が特定の未来学書につながる稀な例である。
Notable artists
- Juan Atkins
- Derrick May
- Jeff Mills
- Ben Klock
- Nina Kraviz
- Charlotte de Witte
- Amelie Lens
Notable tracks
- Juan Atkins — Cosmic Cars (1982)
- Derrick May — Strings of Life (1987)
- Big Fun (1988)
- Jeff Mills — The Bells (1996)
- Juan Atkins — No UFOs (1985)
Later notable tracks
- Ben Klock — Subzero (2009)
- Nina Kraviz — Ghetto Kraviz (2012)
- Charlotte de Witte — Doppler (2019)
- Amelie Lens — Higher (2019)
