Deep House
夜更けに聴く、ジャズやソウルの温かみをまとったハウス。テンポをやや落とし、滑らかな音の質感を特徴とする。1980年代後半、シカゴとニューヨークで発展した。
What it sounds like
ハウスの一系統で、BPMは118〜124とやや遅め。特徴は、ジャズのように厚みのあるコード(基本の和音にさらに音を重ねた「テンション」と呼ばれる響き)、ソウル風のヴォーカル、フェンダー・ローズという電気ピアノの温かい音色。そこに太いベースラインと控えめなドラムが重なる。その音は「温かい」「内省的」「深夜向き」などと形容される。歌入りの曲では女性ヴォーカルが伸びやかに歌い上げ、歌のない曲では、6〜10分かけて音が少しずつ厚みを増していく。
How it came about
源流は1985〜86年のシカゴ。ラリー・ハードがMr. Fingers名義で発表した『Can You Feel It』『Mystery of Love』(Fingers Inc.版は1986年)が原点で、シカゴ・ハウスを、より内省的で和音の響きが豊かな方向へ推し進めた。ニューヨークのケリー・チャンドラーやマスターズ・アット・ワークといった制作者たちが、ゴスペル(教会で歌われる音楽)で鍛えられた力強い歌声を取り入れ、1990年代に発展させた。同じ頃、ドイツではベーシック・チャンネルらが、エコー(残響)を深くかけ、重く沈み込むような別系統(『ダブハウス』と呼ばれる)を生み、デトロイトのケニー・ディクソン・ジュニア(ムーディーマン)も土臭くソウルフルな独自の色を加えた。2010年前後には、Disclosureらのヒットやラリー・ハード再評価の波で世界的な再ブームを迎えた。ニューヨークの人気クラブOutputは2019年に、ベルリンのWatergateも2024年末に閉じた。それでもイビサ島のビーチクラブSunset Ashramのサンセットなどでは、今もフロアを満たす定番曲として鳴り続けている。
What to listen for
まずはコードに耳を傾けてみよう。ジャズのような複雑で甘い響きの和音が、この音楽の温かさを生んでいる。次にフェンダー・ローズの丸く柔らかい音色、そして一つの母音を、音程を上下させながら長く伸ばして歌う「メリスマ」という節回しにも耳を澄ませてみよう。ベースとキックの太さも聴き逃せない。曲が始まって2〜3分かけて徐々に音が重なり、5分目あたりで頂点に達する展開のパターンも、聴き慣れると気持ちよく身を任せられるはずだ。
If you only hear one thing
源流を1曲だけ選ぶなら、Mr. Fingers『Can You Feel It』(1986)。ここから全てが始まった。歌もので聴くなら、Aly-Us『Follow Me』(1992)が定番。最近の入り口としては、Disclosure『Latch』(2012)。ディープハウスがポップスのヒットチャートにまで届いた代表例だ(ただし当人たちは『ディープハウス』と呼ばれることを好まない)。日本勢では、生楽器を取り入れた洗練されたサウンドで知られるStudio Apartmentや、Soichi Terada『Sounds From the Far East』(1990年代の音源を集めた編集盤。2015年の再発を機に海外で熱狂的に再評価された)あたりがおすすめ。
Trivia
ラリー・ハード(Mr. Fingers)が1986年に『Can You Feel It』を録音したとき、制作にコンピュータは使わず、2台のカセットデッキとローランドのJuno-60(シンセサイザー)、TR-909(ドラムマシン)だけで、ほぼ一発録りの手弾きで作り上げた。あの印象的な、ストリングスのように響く音色も、Juno-60のコードを長く持続させて生み出したものだ。
Hear the rhythm
The signature rhythm pattern of this genre. Press play to loop it, and follow the score below to see which beat is sounding.
Notable artists
- Disclosure
Notable tracks
- Can You Feel It — Larry Heard (1986)
- Latch — Disclosure (2012)
- F for You — Disclosure (2013)
- White Noise — Disclosure (2013)
- Omen — Disclosure (2015)
