古典

トリオ・ソナタ

Trio Sonata

イタリア / 南欧 · 1660〜1760年

2つの旋律楽器と通奏低音による、バロック室内楽の中核形式。

どんな音か

2本の旋律楽器(ヴァイオリン、フルート、オーボエなど)と通奏低音(チェロ+チェンバロまたはオルガン)から成る室内楽の形式。音域の高い2本が対等に掛け合いながら旋律を展開し、低音部がそれを和声的に支える。通奏低音のチェロが動く音型(バスライン)は即興的な要素を含み、チェンバロ奏者はそのバスラインに数字で指示された和音を読み解いてリアルタイムで補う。音の数は少ないが、3つのパート(実際には4人が演奏することが多い)の絡み合いは精密で、各旋律楽器が主題を交換したり模倣したりする。

生まれた背景

17世紀のローマとボローニャで形成され、アルカンジェロ・コレッリが1689年に出版した「教会トリオ・ソナタ 作品3」がジャンルの規範を作った。コレッリの作品はヨーロッパ全土に広まり、バッハやヘンデルはその書法を学びながら自分のスタイルに取り込んだ。バッハは「音楽の捧げもの」(BWV1079、1747年)の中でトリオ・ソナタを書いており、これは晩年の最も緻密な室内楽のひとつ。18世紀後半に古典派が台頭すると、弦楽四重奏やピアノソナタへ関心が移り、ジャンルとして書かれる頻度は減っていった。

聴きどころ

2本の旋律楽器が同じ主題を時差をつけて模倣(カノン/フーガ的手法)する場面を追うとよい。片方が主題を提示すると、もう片方が少し遅れて同じ旋律を始める。このずれが和声上の緊張を生み、解決に向かう動きを聴き取る。バスラインは単なる伴奏ではなく、独自の音楽的ラインを持っているので、意識して追うと音楽の立体感が増す。

発展

コレッリ作品1(1681)以降の4作で教会・室内ソナタの規範が確立し、ヘンデル作品2・5、バッハの「音楽の捧げもの」内のトリオ・ソナタ(BWV1079)、テレマンの「忠実な音楽の師」誌掲載作などへ広がった。18世紀半ばにはギャラント様式が台頭し、四重奏・五重奏など新編成へ重心が移った。

出来事

  • 1681: コレッリ「教会トリオ・ソナタ集」作品1
  • 1689: コレッリ作品3、教会ソナタの古典型
  • 1720年頃: バッハ、オルガン・トリオ・ソナタ集 BWV525-530
  • 1747: バッハ「音楽の捧げもの」内のトリオ・ソナタ

派生・影響

古典派の弦楽四重奏、ピアノ・トリオへ受け継がれ、室内楽の基本書法を準備した。20世紀の新古典主義作曲家(ヒンデミット)も範例として再訪している。

音楽的特徴

楽器2つの旋律楽器、通奏低音(鍵盤+低弦)

リズム教会ソナタ4楽章、舞曲楽章

代表アーティスト

  • アルカンジェロ・コレッリイタリア · 1675年〜1713
  • ゲオルク・フィリップ・テレマンドイツ · 1700年〜1767
  • ヨハン・ゼバスティアン・バッハドイツ · 1703年〜1750

代表曲

  • 教会トリオ・ソナタ ヘ長調 作品3-1アルカンジェロ・コレッリ (1689)
  • 室内トリオ・ソナタ ニ長調 作品4-2アルカンジェロ・コレッリ (1694)
  • オルガン・ソナタ第3番 ニ短調 BWV 527ヨハン・ゼバスティアン・バッハ (1730)
  • 音楽の捧げもの BWV 1079より三重奏ソナタヨハン・ゼバスティアン・バッハ (1747)

日本との関係

日本では古楽(バロック音楽)演奏の普及とともに知られるようになった。鈴木雅明率いるバッハ・コレギウム・ジャパンが活動拠点を日本に置きながら国際的な評価を得ており、バッハのトリオ・ソナタを含むバロック室内楽の演奏会が定期的に開かれている。古楽専門のレコードレーベルが日本でも流通しており、コレッリやバッハの録音は比較的入手しやすい。

初めて聴くなら

コレッリの「教会トリオ・ソナタ ヘ長調 作品3-1」(1689年)から始めるとジャンルの原型がつかめる。次にバッハの「音楽の捧げもの」から三重奏ソナタを聴くと、同じ形式が数十年後にどう洗練されたかが対比できる。

豆知識

トリオ・ソナタという名前は「3声部のソナタ」を意味するが、実際の演奏には4人(場合によっては5人)が必要になる。通奏低音が「チェロ+チェンバロ」の2人で担われるからで、「3声部」とは楽器の数ではなく書かれた声部の数を指す。この命名の混乱は当時から存在し、コレッリ自身もこの形式を何と呼ぶかについて統一した呼び方を使っていなかった。

影響・派生で結ばれたジャンル

ジャンル関係図1660年代1670年代1750年代トリオ・ソナタトリオ・ソナタ合奏協奏曲合奏協奏曲弦楽四重奏曲弦楽四重奏曲凡例派生影響同系統
凡例
派生影響同系統
トリオ・ソナタを中心とした近傍図。中心と直接結ばれるエッジが強調表示されます。

トリオ・ソナタ の系譜全体図(多段)を見る

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