トリオ・ソナタ
2つの旋律楽器と通奏低音による、バロック室内楽の中核形式。
どんな音か
2本の旋律楽器(ヴァイオリン、フルート、オーボエなど)と通奏低音(チェロ+チェンバロまたはオルガン)から成る室内楽の形式。音域の高い2本が対等に掛け合いながら旋律を展開し、低音部がそれを和声的に支える。通奏低音のチェロが動く音型(バスライン)は即興的な要素を含み、チェンバロ奏者はそのバスラインに数字で指示された和音を読み解いてリアルタイムで補う。音の数は少ないが、3つのパート(実際には4人が演奏することが多い)の絡み合いは精密で、各旋律楽器が主題を交換したり模倣したりする。
生まれた背景
聴きどころ
2本の旋律楽器が同じ主題を時差をつけて模倣(カノン/フーガ的手法)する場面を追うとよい。片方が主題を提示すると、もう片方が少し遅れて同じ旋律を始める。このずれが和声上の緊張を生み、解決に向かう動きを聴き取る。バスラインは単なる伴奏ではなく、独自の音楽的ラインを持っているので、意識して追うと音楽の立体感が増す。
発展
コレッリ作品1(1681)以降の4作で教会・室内ソナタの規範が確立し、ヘンデル作品2・5、バッハの「音楽の捧げもの」内のトリオ・ソナタ(BWV1079)、テレマンの「忠実な音楽の師」誌掲載作などへ広がった。18世紀半ばにはギャラント様式が台頭し、四重奏・五重奏など新編成へ重心が移った。
出来事
- 1681: コレッリ「教会トリオ・ソナタ集」作品1
- 1689: コレッリ作品3、教会ソナタの古典型
- 1720年頃: バッハ、オルガン・トリオ・ソナタ集 BWV525-530
- 1747: バッハ「音楽の捧げもの」内のトリオ・ソナタ
派生・影響
古典派の弦楽四重奏、ピアノ・トリオへ受け継がれ、室内楽の基本書法を準備した。20世紀の新古典主義作曲家(ヒンデミット)も範例として再訪している。
音楽的特徴
楽器2つの旋律楽器、通奏低音(鍵盤+低弦)
リズム教会ソナタ4楽章、舞曲楽章
代表アーティスト
- アルカンジェロ・コレッリ
- ゲオルク・フィリップ・テレマン
- ヨハン・ゼバスティアン・バッハ
代表曲
- 教会トリオ・ソナタ ヘ長調 作品3-1 — アルカンジェロ・コレッリ (1689)
- 室内トリオ・ソナタ ニ長調 作品4-2 — アルカンジェロ・コレッリ (1694)
- オルガン・ソナタ第3番 ニ短調 BWV 527 — ヨハン・ゼバスティアン・バッハ (1730)
- 音楽の捧げもの BWV 1079より三重奏ソナタ — ヨハン・ゼバスティアン・バッハ (1747)
日本との関係
初めて聴くなら
コレッリの「教会トリオ・ソナタ ヘ長調 作品3-1」(1689年)から始めるとジャンルの原型がつかめる。次にバッハの「音楽の捧げもの」から三重奏ソナタを聴くと、同じ形式が数十年後にどう洗練されたかが対比できる。
豆知識
トリオ・ソナタという名前は「3声部のソナタ」を意味するが、実際の演奏には4人(場合によっては5人)が必要になる。通奏低音が「チェロ+チェンバロ」の2人で担われるからで、「3声部」とは楽器の数ではなく書かれた声部の数を指す。この命名の混乱は当時から存在し、コレッリ自身もこの形式を何と呼ぶかについて統一した呼び方を使っていなかった。
