フーガ
主題が複数声部に順次模倣されて発展する厳格な対位法形式。バロック対位法の頂点。
どんな音か
フーガは、一つの主題が複数の声部に順番に現れ、模倣されながら発展する対位法の形式。主題、応答、対主題が絡み、音楽が知的な会話のように進む。バロック期のバッハで頂点を迎えたが、単なる古い作法ではなく、ベートーヴェンやヒンデミットにも受け継がれた。厳格さと高揚が同時にある形式である。
生まれた背景
17世紀後半から18世紀前半にかけて、オルガン音楽、鍵盤曲、教会音楽の中で洗練された。リチェルカーレやカンツォーナなどの模倣的な形式を受け継ぎ、バッハの「平均律クラヴィーア曲集」や「フーガの技法」で体系的な完成度に達した。各声部が独立しながら全体を作るため、作曲技術の試金石にもなった。
聴きどころ
最初に出る主題を覚えておくとよい。その旋律が次の声部、さらに別の声部に現れ、重なりながら密度を増す。旋律が同時にいくつも鳴るので難しく感じるが、追う対象を一つに絞ると流れが見える。主題が低音に出た時、高音に出た時で表情が変わる点も面白い。最後に全声部が集まる充実感を味わいたい。
発展
フローベルガー、パッヘルベルが基本形を確立し、バッハが「平均律クラヴィーア曲集」(1722・1742)と「フーガの技法」(1751)で芸術的頂点を示した。古典派以降は独立形式というより楽章内技法として用いられ、ベートーヴェン後期、メンデルスゾーン、ブラームスが復活させた。20世紀ではヒンデミット、バルトーク、ショスタコーヴィチが新古典主義的に再解釈した。
出来事
- 1722: バッハ「平均律クラヴィーア曲集」第1巻完成
- 1742: 同第2巻完成
- 1751: バッハ「フーガの技法」未完出版
- 1825: ベートーヴェン「大フーガ」作品133
派生・影響
古典派ソナタ展開部内のフガート、19世紀の合唱フーガ(ベートーヴェン「荘厳ミサ」)、20世紀のシュニトケら新古典主義作曲家まで、絶え間なく参照され続ける形式である。
音楽的特徴
楽器鍵盤楽器、合唱、室内楽、管弦楽
リズム主題模倣、対主題、転調設計
代表アーティスト
- ジローラモ・フレスコバルディ
- ディートリヒ・ブクステフーデ
- ヨハン・ゼバスティアン・バッハ
- パウル・ヒンデミット
代表曲
- 平均律クラヴィーア曲集第1巻 第1番 ハ長調 BWV 846 — ヨハン・ゼバスティアン・バッハ (1722)
- 平均律第2巻 嬰ハ短調 BWV 873 — ヨハン・ゼバスティアン・バッハ (1742)
- フーガの技法 BWV 1080 — ヨハン・ゼバスティアン・バッハ (1751)
- 大フーガ 変ロ長調 作品133 — ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン (1825)
