古典

フーガ

Fugue

西ヨーロッパ · 1670〜1760年

主題が複数声部に順次模倣されて発展する厳格な対位法形式。バロック対位法の頂点。

どんな音か

フーガは、一つの主題が複数の声部に順番に現れ、模倣されながら発展する対位法の形式。主題、応答、対主題が絡み、音楽が知的な会話のように進む。バロック期のバッハで頂点を迎えたが、単なる古い作法ではなく、ベートーヴェンやヒンデミットにも受け継がれた。厳格さと高揚が同時にある形式である。

生まれた背景

17世紀後半から18世紀前半にかけて、オルガン音楽、鍵盤曲、教会音楽の中で洗練された。リチェルカーレやカンツォーナなどの模倣的な形式を受け継ぎ、バッハの「平均律クラヴィーア曲集」や「フーガの技法」で体系的な完成度に達した。各声部が独立しながら全体を作るため、作曲技術の試金石にもなった。

聴きどころ

最初に出る主題を覚えておくとよい。その旋律が次の声部、さらに別の声部に現れ、重なりながら密度を増す。旋律が同時にいくつも鳴るので難しく感じるが、追う対象を一つに絞ると流れが見える。主題が低音に出た時、高音に出た時で表情が変わる点も面白い。最後に全声部が集まる充実感を味わいたい。

発展

フローベルガー、パッヘルベルが基本形を確立し、バッハが「平均律クラヴィーア曲集」(1722・1742)と「フーガの技法」(1751)で芸術的頂点を示した。古典派以降は独立形式というより楽章内技法として用いられ、ベートーヴェン後期、メンデルスゾーン、ブラームスが復活させた。20世紀ではヒンデミット、バルトーク、ショスタコーヴィチが新古典主義的に再解釈した。

出来事

  • 1722: バッハ「平均律クラヴィーア曲集」第1巻完成
  • 1742: 同第2巻完成
  • 1751: バッハ「フーガの技法」未完出版
  • 1825: ベートーヴェン「大フーガ」作品133

派生・影響

古典派ソナタ展開部内のフガート、19世紀の合唱フーガ(ベートーヴェン「荘厳ミサ」)、20世紀のシュニトケら新古典主義作曲家まで、絶え間なく参照され続ける形式である。

音楽的特徴

楽器鍵盤楽器、合唱、室内楽、管弦楽

リズム主題模倣、対主題、転調設計

代表アーティスト

  • ジローラモ・フレスコバルディイタリア · 1605年〜1643
  • ディートリヒ・ブクステフーデデンマーク/ドイツ · 1670年〜1707
  • ヨハン・ゼバスティアン・バッハドイツ · 1703年〜1750
  • パウル・ヒンデミットドイツ/米国 · 1920年〜1963

代表曲

日本との関係

日本では音楽教育、ピアノ学習、作曲理論の中でよく扱われる。バッハの平均律は、演奏家にとって技術と音楽性の両方を鍛える基本レパートリーである。アニメやゲーム音楽でも、厳粛さや知的な雰囲気を出すためにフーガ的な書法が使われることがあり、形式名を知らなくても響きは耳にしている。

初めて聴くなら

入口は「平均律クラヴィーア曲集第1巻 第1番 ハ長調 BWV 846 — ヨハン・ゼバスティアン・バッハ (1722)」。前奏曲と合わせて聴くと、透明な和声から対位法へ入る流れが分かりやすい。より抽象的な構築美を聴くなら「フーガの技法 BWV 1080」、激しい近代的な緊張ならベートーヴェンの「大フーガ」がよい。

豆知識

フーガは曲種というより作曲手法に近く、ミサ、ソナタ、交響曲の一部にも現れる。主題が逃げるように声部を渡っていくため、語源はラテン語の逃走に関係するとされる。聴き慣れると、複数の声が同時に考えているような快感がある。

影響・派生で結ばれたジャンル

ジャンル関係図1580年代1670年代フーガフーガトッカータトッカータ凡例派生影響同系統
凡例
派生影響同系統
フーガを中心とした近傍図。中心と直接結ばれるエッジが強調表示されます。

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西ヨーロッパ · 1670年前後 (±25年)

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