スチールパン音楽
1930~40年代トリニダードで、廃油ドラム缶を音律楽器に転用して生まれた、カリブ独自の打楽器オーケストラ伝統。
どんな音か
生まれた背景
1930年代から40年代、打楽器規制や植民地社会の制約の中で、廃油ドラム缶を叩いて音階を作る工夫から発展した。貧しい都市地区の若者文化として始まり、やがて全国的なコンテストPanoramaや学校教育にも入った。Lord KitchenerやThe Mighty Sparrowのカリプソ曲は、スチールバンドの重要なレパートリーになった。
聴きどころ
まず音の立ち上がりと余韻を聴く。マレットが金属面を叩く瞬間は明るく、すぐに丸い倍音が広がる。大編成では、低音パンがベースを支え、中音域が和音を刻み、高音パンが旋律を走らせる。カリプソ曲では歌のユーモアを、スチールバンド版では編曲の厚みを味わうとよい。
発展
1951年に英国フェスティバル・オブ・ブリテンで国際デビューし、1970年代からのパノラマ大会(国営年次競演)で巨大化した。1990年代以降は欧米の大学プログラムや小学校でも教えられ、世界中のスチールバンドが参加する。
出来事
- 1939: 廃油ドラム缶の音律化開始
- 1951: 英国フェスティバル国際デビュー
- 1963: 国民楽器化
- 1971: パノラマ大会開始
派生・影響
カリプソ、ソカ、現代カリブ・ジャズと深い相互影響。
音楽的特徴
楽器スチールパン(複数音域)、エンジン・ルーム打楽器
リズムカリプソ系2/4、巨大編成、複数音域和声
代表アーティスト
- Andy Narell
代表曲
- Jean and Dinah — The Mighty Sparrow (1956)
- Sugar Bum Bum — Lord Kitchener (1978)
- The Long Way Home — Andy Narell (1981)
- Pan in A Minor — Lord Kitchener (1987)
The Hammer — Lord Kitchener (1972)
日本との関係
初めて聴くなら
入口は「Pan in A Minor — Lord Kitchener (1987)」。スチールパン文化を歌った代表的なカリプソとして聴きやすい。古典的な社会歌なら「Jean and Dinah — The Mighty Sparrow (1956)」、現代的なパンの美しさなら「The Long Way Home — Andy Narell (1981)」がよい。
豆知識
スチールパンは20世紀に発明された数少ない新しいアコースティック楽器としてよく語られる。もともとは廃材の工夫から生まれたが、現在は精密な調律技術を必要とする高度な楽器である。金属のへこみ一つひとつが音程を持つ。
