伝統・民族

スチールパン音楽

Steelpan / Steelband Music

トリニダード・トバゴ / カリブ海 · 1939年〜

別名: Pan music

1930~40年代トリニダードで、廃油ドラム缶を音律楽器に転用して生まれた、カリブ独自の打楽器オーケストラ伝統。

どんな音か

スチールパン音楽は、トリニダード・トバゴで生まれた、ドラム缶を加工した旋律打楽器による音楽。金属なのに柔らかく歌う音色を持ち、複数のパンが集まるとオーケストラのように和声とリズムを作る。カーニバル、カリプソソカと深く結びつき、カリブ海の創意と共同体の誇りを象徴する楽器文化である。

生まれた背景

1930年代から40年代、打楽器規制や植民地社会の制約の中で、廃油ドラム缶を叩いて音階を作る工夫から発展した。貧しい都市地区の若者文化として始まり、やがて全国的なコンテストPanoramaや学校教育にも入った。Lord KitchenerやThe Mighty Sparrowのカリプソ曲は、スチールバンドの重要なレパートリーになった。

聴きどころ

まず音の立ち上がりと余韻を聴く。マレットが金属面を叩く瞬間は明るく、すぐに丸い倍音が広がる。大編成では、低音パンがベースを支え、中音域が和音を刻み、高音パンが旋律を走らせる。カリプソ曲では歌のユーモアを、スチールバンド版では編曲の厚みを味わうとよい。

発展

1951年に英国フェスティバル・オブ・ブリテンで国際デビューし、1970年代からのパノラマ大会(国営年次競演)で巨大化した。1990年代以降は欧米の大学プログラムや小学校でも教えられ、世界中のスチールバンドが参加する。

出来事

  • 1939: 廃油ドラム缶の音律化開始
  • 1951: 英国フェスティバル国際デビュー
  • 1963: 国民楽器化
  • 1971: パノラマ大会開始

派生・影響

カリプソ、ソカ、現代カリブ・ジャズと深い相互影響。

音楽的特徴

楽器スチールパン(複数音域)、エンジン・ルーム打楽器

リズムカリプソ系2/4、巨大編成、複数音域和声

代表アーティスト

  • Andy Narellアメリカ合衆国 · 1979年〜

代表曲

日本との関係

日本にもスチールパンの演奏団体や教室があり、大学サークル、地域イベント、カリブ音楽フェスで親しまれている。夏や海のイメージだけで消費されがちだが、楽器の歴史には植民地支配、都市の若者、共同体の競争と誇りがある。日本の奏者も現地Panoramaに学び、編曲や楽器制作に関心を広げている。

初めて聴くなら

入口は「Pan in A Minor — Lord Kitchener (1987)」。スチールパン文化を歌った代表的なカリプソとして聴きやすい。古典的な社会歌なら「Jean and Dinah — The Mighty Sparrow (1956)」、現代的なパンの美しさなら「The Long Way Home — Andy Narell (1981)」がよい。

豆知識

スチールパンは20世紀に発明された数少ない新しいアコースティック楽器としてよく語られる。もともとは廃材の工夫から生まれたが、現在は精密な調律技術を必要とする高度な楽器である。金属のへこみ一つひとつが音程を持つ。

影響・派生で結ばれたジャンル

ジャンル関係図1840年代1930年代スチールパン音楽スチールパン音楽カリプソカリプソ凡例派生影響同系統
凡例
派生影響同系統
スチールパン音楽を中心とした近傍図。中心と直接結ばれるエッジが強調表示されます。

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