ラテン・カリブ

カリプソ

Calypso

トリニダード・トバゴ / カリブ海 · 1840年〜

トリニダード・トバゴで19世紀に成立し、20世紀にカリブ海全域に広がった、社会風刺と機知を盛り込んだ歌詞の中心であるアフロ・カリブ歌謡。

どんな音か

テンポは 90〜120BPM で、リズムは 16 ビートの soca に先行する 4 ビート。楽器は パーカッション主体で、steel drum や hand drum、マリンバのような打楽器が重ねられ、ボーカルはスピーチのような速度で歌詞を流す。歌詞が『双方向的なやり取り』の形式を持ち、スタジアム内での『大合唱』を想定した設計。メロディより『ことば遊び』と『機知』が重視される。

生まれた背景

19 世紀のトリニダード・トバゴで、奴隷制廃止後のアフリカン・ディアスポラと先住民、ヨーロッパ移民の音文化が混交。かつて奴隷が『夜間の社会風刺を歌で伝える』という伝統が カリプソ の骨子になった。20 世紀にはカーニバル(Carnival of Trinidad and Tobago)の中心音楽として確立され、1950 年代にはアメリカ合衆国〜ヨーロッパへも export された。

聴きどころ

歌詞の韻律と機知、コーラスの『サウンド感』(複数の声が重なる快感)、steel drum のハーモニー。曲というより『イベント』として体験される点。

発展

20世紀前半マイティ・スパロー、ロード・キッチェナーがカリプソをグローバル化し、1956年のハリー・ベラフォンテ「Day-O(バナナ・ボート)」で米国メインストリームに紹介された。1970年代以降ソカへ派生し、現代ではチャットニー・ソカやラパソとも交差する。

出来事

  • 1834: トリニダード奴隷解放
  • 1912: 初期商業録音
  • 1956: ハリー・ベラフォンテ「Day-O」
  • 1969: マイティ・スパロー国際的成功
  • 1980: スチールパン・カリプソ全盛

派生・影響

ソカ、チャットニー、メント、レゲエ、米国フォークと交差。

音楽的特徴

楽器アコースティックギター、シャック・シャック、クアトロ、スチールパン、声

リズム中速2/4、コール&レスポンス、即興諷刺

代表アーティスト

  • Lord Kitchenerトリニダード・トバゴ · 1942年〜2000
  • Harry Belafonteアメリカ合衆国/ジャマイカ · 1949年〜2023
  • The Mighty Sparrowトリニダード・トバゴ · 1956年〜

代表曲

日本との関係

1950 年代の Harry Belafonte『Day-O』の流行により、日本でも カリプソ というジャンル名は知られるようになったが、当時は『ハワイアン的な陽気な南方音楽』程度の理解に留まった。

初めて聴くなら

Harry Belafonte『Day-O (Banana Boat Song)』で基本形を、The Mighty Sparrow『Jean and Dinah』で social commentary の側面を感じる。

豆知識

カリプソ の『キング』『皇帝』といった称号は Carnival 期間中に『歌唱対抗戦』で選ばれ、その年の社会情勢や政治的スタンスをリリックで表現する者が勝利する。つまり カリプソ は『民主的かつ反権力的な音楽ジャンル』として構造化されている。

影響・派生で結ばれたジャンル

ジャンル関係図1840年代1930年代1970年代カリプソカリプソスチールパン音楽スチールパン音楽ソカソカ凡例派生影響同系統
凡例
派生影響同系統
カリプソを中心とした近傍図。中心と直接結ばれるエッジが強調表示されます。

カリプソ の系譜全体図(多段)を見る

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