古典

独奏協奏曲(バロック)

Baroque Solo Concerto

ヴェネツィア / イタリア / 南欧 · 1690〜1750年

ひとりの独奏者と合奏が対峙する協奏曲形式。ヴィヴァルディが標準モデルを確立した。

どんな音か

バロックの独奏協奏曲は、一人の独奏者と合奏が対話し、ときに競い合う器楽形式。リトルネッロと呼ばれる合奏の主題が戻り、その間で独奏楽器が技巧や歌を見せる。ヴィヴァルディの「四季」では、ヴァイオリンが鳥、嵐、風、眠りを描き、バッハでは構造がより濃密に組み上がる。

生まれた背景

17世紀末から18世紀前半のイタリアで発展し、ヴィヴァルディが急速・緩徐・急速の三楽章モデルを広めた。ヴェネツィアのピエタ養育院の演奏文化や出版楽譜の流通が、協奏曲をヨーロッパ中へ広げた。バッハはイタリア協奏曲の形式を学び、自分の対位法と結びつけた。

聴きどころ

合奏が主題を示し、独奏がそこから飛び出す瞬間を聴くとよい。速い楽章では独奏の運動性、遅い楽章では歌うような線が中心になる。通奏低音が拍を支えるため、独奏が自由に見えても足場はしっかりしている。

発展

トレッリ作品6・8(1698・1709)が独奏協奏曲の原型を示し、ヴィヴァルディ「調和の霊感」作品3(1711)と「四季」(1725)が決定版モデルを示した。バッハはヴィヴァルディ作品を鍵盤独奏に編曲して学習し(BWV972ff.)、自身の独奏協奏曲(BWV1041〜1043)に活かした。テレマン、ヘンデル、ロカテッリも各国で発展に寄与した。

出来事

  • 1698: トレッリ「6つの協奏曲」作品6
  • 1711: ヴィヴァルディ「調和の霊感」作品3出版
  • 1725: ヴィヴァルディ「四季」(作品8の1〜4)出版
  • 1738: バッハ、ライプツィヒでチェンバロ協奏曲を上演

派生・影響

古典派モーツァルト・ピアノ協奏曲、ロマン派ヴァイオリン協奏曲(ベートーヴェン、ブラームス、チャイコフスキー)など、独奏協奏曲伝統の祖形となった。

音楽的特徴

楽器弦楽合奏、通奏低音、独奏者

リズムリトルネロ形式、急‐緩‐急の3楽章

代表アーティスト

  • アントニオ・ヴィヴァルディイタリア · 1700年〜1741
  • ヨハン・ゼバスティアン・バッハドイツ · 1703年〜1750

代表曲

日本との関係

日本ではクラシック入門として「四季」が非常に親しまれている。ヴァイオリン学習者にも重要なレパートリーで、バッハの協奏曲は室内オーケストラや古楽演奏でよく取り上げられる。テレビやCMで耳にする機会も多い。

初めて聴くなら

入口は「四季『春』作品8-1 — アントニオ・ヴィヴァルディ (1725)」。形式の明快さと描写性が分かりやすい。バッハの深さを聴くなら「ヴァイオリン協奏曲イ短調 BWV 1041 — ヨハン・ゼバスティアン・バッハ (1730)」。鍵盤協奏曲では「チェンバロ協奏曲ニ短調 BWV 1052」もよい。

豆知識

独奏協奏曲は、ソリストをスターにする形式でもあった。合奏の中から一人が前へ出る構造は、のちのクラシック音楽の名人芸文化にも大きくつながっている。 バロック時代の協奏曲は、楽器の性能や奏者の名人芸を披露する場でもあり、独奏楽器の個性を広げる実験室でもあった。

影響・派生で結ばれたジャンル

ジャンル関係図1670年代1690年代1760年代独奏協奏曲(バロック)独奏協奏曲(バロック)合奏協奏曲合奏協奏曲古典派協奏曲古典派協奏曲凡例派生影響同系統
凡例
派生影響同系統
独奏協奏曲(バロック)を中心とした近傍図。中心と直接結ばれるエッジが強調表示されます。

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同じ時期・同じ地域で生まれた他のジャンル

イタリア · 1690年前後 (±25年)

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