古典

オペラ・ブッファ

Opera Buffa

ナポリ / イタリア / 南欧 · 1730〜1900年

18世紀イタリアの喜歌劇。市民的日常と滑稽な人物像を題材に、軽妙なアリアと重唱で展開する。

どんな音か

オペラ・セリアと対をなす「喜劇オペラ」。庶民や使用人が主役で、結婚詐欺や勘違いの恋愛を題材にする。アリアより重唱(2〜6人が同時に違うことを歌う「アンサンブル」)が多用され、フィナーレでは登場人物全員が舞台に集まって混乱が頂点に達する。レチタティーヴォはセコ(チェンバロのみ)とアコンパニャート(弦楽伴奏付き)を使い分ける。テンポはセリアより速く、メロディも口ずさみやすい。

生まれた背景

1730年代のナポリで、オペラ・セリアの幕間に上演されていた短い喜劇「インテルメッツォ」が独立して長編化した。ペルゴレージ『奥様女中』(1733)が転換点。1780〜90年代のウィーンで、モーツァルト+ダ・ポンテ(台本作家)のコンビが『フィガロの結婚』『ドン・ジョヴァンニ』『コジ・ファン・トゥッテ』を立て続けに発表し、オペラ・ブッファをセリアと同等の芸術として確立した。19世紀にはロッシーニ『セビリアの理髪師』(1816)、ドニゼッティ『愛の妙薬』(1832)へ続く。

聴きどころ

アンサンブル(重唱)で複数の登場人物が違う気持ちを同時に歌うところ。たとえば『フィガロの結婚』第2幕のフィナーレは、20分以上にわたって登場人物が次々と現れ、最終的に7人が同時に歌う。セリアのような立ち止まる長尺アリアより、会話と歌が連続して流れる劇のテンポを感じてほしい。

発展

ペルゴレージの後、ガルッピ、ピッチンニ、パイジエッロらナポリ・ヴェネツィア派が確立し、モーツァルト=ダ・ポンテの3作(「フィガロの結婚」「ドン・ジョヴァンニ」「コジ・ファン・トゥッテ」)で文学的・心理的深さを獲得した。19世紀にはロッシーニ「セビリアの理髪師」、ドニゼッティ「愛の妙薬」が伝統を継承した。

出来事

  • 1733: ペルゴレージ「奥様女中」初演
  • 1786: モーツァルト「フィガロの結婚」初演
  • 1816: ロッシーニ「セビリアの理髪師」初演
  • 1893: ヴェルディ「ファルスタッフ」初演

派生・影響

ロッシーニ・ドニゼッティ・ヴェルディ初期のコミック・オペラ、ヴェルディ最後の「ファルスタッフ」(1893)まで脈々と続く。プッチーニの「ジャンニ・スキッキ」もこの伝統の延長線上にある。

音楽的特徴

楽器独唱、合唱、管弦楽

リズムレチタティーヴォ・セッコ、アンサンブル・フィナーレ

代表アーティスト

  • ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルトオーストリア · 1762年〜1791
  • ジョアキーノ・ロッシーニイタリア · 1810年〜1868
  • ジュゼッペ・ヴェルディイタリア · 1839年〜1901

代表曲

  • ドン・ジョヴァンニ K. 527ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト (1787)
  • 奥様女中 (1733)
  • フィガロの結婚 K. 492ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト (1786)
  • セビリアの理髪師ジョアキーノ・ロッシーニ (1816)
  • ファルスタッフジュゼッペ・ヴェルディ (1893)

日本との関係

戦後、二期会、藤原歌劇団が『フィガロの結婚』『セビリアの理髪師』を定番演目として上演し続けてきた。新国立劇場の開場(1997)以後はダ・ポンテ三部作の上演が増え、字幕付きで親しみやすい入口になっている。

初めて聴くなら

1作だけ観るなら、モーツァルト『フィガロの結婚』(1786)。序曲のテンポ感だけで世界が決まる。短く入りたいなら、ロッシーニ『セビリアの理髪師』の「私は街の何でも屋(Largo al factotum)」。バリトンの早口が圧巻。

豆知識

モーツァルト『コジ・ファン・トゥッテ』は19世紀には「不道徳」とされて改変上演が続き、原作通りに復活したのは20世紀に入ってから。日本語訳「女はみんなこうしたもの」は本来「女は皆そうする」というニュアンスで、人類普遍の弱さを諷した題名。

影響・派生で結ばれたジャンル

ジャンル関係図1700年代1730年代1750年代オペラ・ブッファオペラ・ブッファオペラ・セリアオペラ・セリアジングシュピールジングシュピール凡例派生影響同系統
凡例
派生影響同系統
オペラ・ブッファを中心とした近傍図。中心と直接結ばれるエッジが強調表示されます。

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