伝統・民族

カールベリヤ

Kalbelia

ラージャスターン州 / インド / 南アジア · 1900年〜

別名: カルベリア

ラージャスターンの蛇遣い民族カールベリヤの歌と踊り。

どんな音か

ベーン(蛇遣いの縦笛——円筒形のリードパイプと吹き込みパイプが組み合わさった楽器)の持続音が底に流れ、その上でダンサーが黒いスカートをぐるぐる回しながら踊る。音楽は繰り返しが多く、ベーンの音は蛇の動きを模したとも言われる。打楽器(ダフ、カルタール)がリズムを刻み、女性の歌い手が甲高い声で即興の詩を乗せる。衣装は黒を基調に鮮やかな刺繍が施され、スカートの広がりと回転が視覚的な中心になる。

生まれた背景

カールベリヤはラージャスターン州の蛇遣い民族(蛇を捕まえ、毒を採取し、薬として売る生計を持っていた集団)で、カースト制度の外縁に位置してきた。旅をしながら生計を立てていたため、歌と踊りが「持ち運べる財産」として磨かれた。グラビ・サペーラは現代における代表的な踊り手で、国際的なフェスティバルでカールベリヤを紹介したことで知られる。ユネスコは2010年に無形文化遺産に登録した。

聴きどころ

ベーンの持続音(ドローン)と旋律が同時に出る仕組みに注意する。吹き込みながら鼻で呼吸する循環呼吸(サーキュラー・ブリージング)で吹かれるため、音が途切れない。歌い手の即興詩は旅の記録や恋愛・神話をテーマにしており、歌詞の切れ目とリズムの切れ目が少しずれる独特のフレーズ感がある。

発展

1980年代以降、グラーボー・サパーラ(踊り手・歌手)らが世界フェスティバル・ツアーを行い、フランスのペレンタウバ国立人類学博物館との共同プロジェクトでも紹介された。2010年にユネスコ無形文化遺産に登録された。

出来事

  • 1972年: 野生生物保護法。
  • 1980年代: グラーボー・サパーラの舞台活動。
  • 1990年代: 国際公演活発化。
  • 2010年: ユネスコ無形文化遺産代表一覧表に登録。
  • 2018年: グラーボー・サパーラ死去で時代の節目。

派生・影響

ラージャスターン文化観光の核、フランス・ジプシー音楽との交流(共通起源説あり)、ボリウッド映画ダンスの素材となる。

音楽的特徴

楽器プーンギ(蛇笛)、ドゥフ、カマイチャ、ハルモニウム、声

リズム高速ドゥフ拍、蛇のような身のこなし、即興的詞章

代表アーティスト

  • Kalbelia Folk Groupインド · 1970年〜
  • Gulabi Saperaインド · 1980年〜

代表曲

日本との関係

インド舞踊全般に関心を持つ人の一部にカールベリヤが知られているが、ラージャスターン音楽の中でもマイナーなジャンルだ。ラージャスターンを代表する音楽としてはカールベリヤよりもランゲ族の音楽や、マンガニヤールの方が日本では紹介されることが多い。

初めて聴くなら

グラビ・サペーラの演奏映像から入る。踊りと音楽が分離しがたいジャンルなので、聴くだけでなく見ることが理解への近道だ。スカートの回転がベーンの音の循環と重なる感覚が分かると、このジャンルの核心に触れられる。

豆知識

カールベリヤの人々は伝統的に蛇の毒を採取して医薬品として売ることで生計を立てていたが、インドで1972年に制定された野生動物保護法により蛇の捕獲・保持が禁止された。その後、多くのカールベリヤの人々が音楽と踊りを主たる生計手段に転換した。

影響・派生で結ばれたジャンル

ジャンル関係図1500年代1900年代カールベリヤカールベリヤラージャスターン民謡ラージャスターン民謡凡例派生影響同系統
凡例
派生影響同系統
カールベリヤを中心とした近傍図。中心と直接結ばれるエッジが強調表示されます。

カールベリヤ の系譜全体図(多段)を見る

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