古典

フランス・オペラ(バロック)

Tragédie en musique

ヴェルサイユ / フランス / 西ヨーロッパ · 1670〜1780年

別名: Tragédie lyrique

リュリがルイ14世の宮廷で確立した、フランス独自の壮麗な悲劇歌劇。

どんな音か

トラジェディ・アン・ミュジークは、ルイ14世時代のフランス宮廷でジャン=バティスト・リュリが確立したバロック・オペラ。神話や英雄悲劇を題材に、序曲、プロローグ、朗唱、合唱、舞曲、機械仕掛けの舞台を組み合わせる。イタリア・オペラの技巧的なアリアより、言葉の威厳と宮廷的な秩序を重視する。

生まれた背景

17世紀後半、フランス絶対王政の文化政策と宮廷バレエの伝統を背景に生まれた。リュリは王権の象徴として壮麗な舞台を作り、後にラモーが和声と管弦楽の色彩をさらに豊かにした。「アルミード」や「イポリトとアリシ」は、フランス語の朗唱と舞曲の美学を示す代表作である。

聴きどころ

まずフランス風序曲の重々しい付点リズムを聴く。王の入場を思わせる威厳が作品の入口になる。歌は超絶技巧より、フランス語の抑揚に沿った朗唱が中心で、そこへ合唱と舞曲が場面を飾る。ラモーでは管弦楽の色彩が鮮やかなので、嵐、魔法、夢の場面の音作りにも注目したい。

発展

リュリの「カドミュスとエルミオーヌ」(1673)以降、毎年オペラ初演が宮廷の儀式となった。ラモーは「イポリトとアリシ」(1733)で和声論に裏付けられた革新的書法を持ち込み、リュリ派とラモー派の論争を引き起こした。グルックがウィーン式改革オペラをパリに持ち込み(1774)、後の「ピッチン二派・グルック派」論争を経て、フランス・グランド・オペラへ橋渡しされた。

出来事

  • 1673: リュリ「カドミュスとエルミオーヌ」初演
  • 1733: ラモー「イポリトとアリシ」初演
  • 1752: 「ブッフォン論争」、イタリア/フランス・オペラ論争
  • 1774: グルック「アウリスのイフィジェニー」パリ初演

派生・影響

19世紀フランス・グランド・オペラ(マイヤベーア)、フランス・リリック・オペラ(グノー、マスネ)、さらにはドビュッシー「ペレアスとメリザンド」のフランス語朗唱志向にまで遠く影響している。

音楽的特徴

楽器独唱、合唱、管弦楽、舞踊

リズムプロローグ+5幕、ディヴェルティスマン、フランス式レシ

代表アーティスト

  • ジャン=バティスト・リュリフランス · 1660年〜1687
  • ヘンリー・パーセルイングランド · 1680年〜1695
  • ジャン=フィリップ・ラモーフランス · 1722年〜1764
  • クリストフ・ヴィリバルト・グルックドイツ/オーストリア · 1740年〜1787

代表曲

日本との関係

日本では古楽ブーム以後、バロック・オペラの一分野として紹介されるようになった。イタリア・オペラやバッハに比べると上演機会は限られるが、古楽器アンサンブル、舞踏研究、フランス文学の文脈で関心を持たれている。宮廷舞踏と音楽が結びつく点は、日本の舞台芸術研究にも刺激を与える。

初めて聴くなら

入口は「アルミード — ジャン=バティスト・リュリ (1686)」。悲劇、魔法、朗唱、舞曲の要素がそろっている。管弦楽の華やかさを知るなら「イポリトとアリシ — ジャン=フィリップ・ラモー (1733)」、感情表現の深さを聴くなら「カストールとポリュックス — ラモー (1737)」がよい。

豆知識

このジャンルでは踊りが余興ではなく、オペラ構造の一部である。フランス宮廷では舞踏が政治的な身体作法でもあったため、舞曲の整ったリズムは王権の秩序を音で示す役割も担った。

影響・派生で結ばれたジャンル

ジャンル関係図1670年代1700年代フランス・オペラ(バロック)フランス・オペラ(バロック)オペラ・セリアオペラ・セリア凡例派生影響同系統
凡例
派生影響同系統
フランス・オペラ(バロック)を中心とした近傍図。中心と直接結ばれるエッジが強調表示されます。

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