トッカータ
鍵盤奏者の名人芸を披露する、自由形式の即興的鍵盤曲。
どんな音か
生まれた背景
聴きどころ
拍をきっちり追うより、手が鍵盤上を走る感覚を聴く。冒頭で強い身振りを示し、自由なパッセージで空間を開き、時にフーガへ入って構築性を見せる。オルガン曲では低音ペダルの迫力、残響、和音の厚みが大きな魅力になる。怖い音楽として消費されがちだが、本来は技巧と即興の見せ場である。
発展
フレスコバルディ「トッカータ集第1巻」(1615)が劇的なリズム転換と装飾を持ち込み、フローベルガーがドイツへ移植した。北ドイツでは「ペダルもふんだんに用いる即興」が発展し、ブクステフーデを経てバッハ「トッカータとフーガ ニ短調」(BWV565、伝)に至った。18世紀半ばには独立曲としては衰退し、前奏曲とフーガのスタイルに吸収された。
出来事
- 1593: アンドレア・ガブリエーリ「Intonationi」出版
- 1615: フレスコバルディ「トッカータ集第1巻」
- 1700年頃: ブクステフーデ、北ドイツ・トッカータ確立
- 1730年頃: バッハ「トッカータとフーガ ニ短調」
派生・影響
前奏曲とフーガ、幻想曲、19世紀のシューマン・トッカータ作品7、20世紀ラヴェル「クープランの墓」のトッカータ、プロコフィエフのピアノ・トッカータへと、技巧的鍵盤書法の代名詞となった。
音楽的特徴
楽器オルガン、チェンバロ
リズム自由形式、装飾的パッセージ、模倣セクション
代表アーティスト
- ジローラモ・フレスコバルディ
- ディートリヒ・ブクステフーデ
- ヨハン・ゼバスティアン・バッハ
代表曲
- トッカータ第7番(第2巻) — ジローラモ・フレスコバルディ (1627)
- 前奏曲、フーガと変奏曲 BuxWV 137 — ディートリヒ・ブクステフーデ (1690)
- トッカータとフーガ ニ短調 BWV 565 — ヨハン・ゼバスティアン・バッハ (1710)
- トッカータ ヘ長調 BWV 540 — ヨハン・ゼバスティアン・バッハ (1717)
日本との関係
初めて聴くなら
豆知識
トッカータは楽譜に書かれていても、即興の気配を強く残すジャンルである。奏者が鍵盤に触れながら音の可能性を広げるという発想が名前に刻まれている。だから整った形式美より、最初の一撃の説得力が大事になる。
