古典

イギリス・マドリガル楽派

English Madrigal School

イングランド / 西ヨーロッパ · 1588〜1627年

1588〜1627年頃に英国で花開いた、イタリア・マドリガーレを翻案した独自の合唱学派。

どんな音か

イギリス・マドリガル楽派は、16世紀末から17世紀初頭のイングランドで花開いた世俗合唱の潮流。イタリアマドリガーレの影響を受けつつ、英語の言葉遊び、牧歌的な明るさ、家庭で歌える親しみやすさを持つ。トーマス・モーレーやトーマス・ウィールクスの作品は、声の軽快な掛け合いが魅力である。

生まれた背景

1588年にイタリアマドリガーレ集が英訳出版されると、イングランドの作曲家たちはそれを手本に英語マドリガルを作り始めた。エリザベス朝の宮廷文化、アマチュア音楽家の家庭演奏、楽譜出版が発展を支えた。イタリア作品より深刻さを抑え、春、恋、自然を明るく歌う作品も多い。

聴きどころ

英語の単語に合わせて声がどう動くかを聴く。上へ行く言葉で旋律が上がり、笑いや鳥の声で短い音型が跳ねるなど、言葉と音の結びつきが分かりやすい。無伴奏で各声部が対等に動くため、ソプラノだけでなく中声部の返しにも耳を向けたい。数分の小品が多く、初めてでも入りやすい。

発展

1601年「The Triumphs of Oriana」(モーレー編、エリザベス女王賛美のマドリガーレ集)で楽派は頂点を迎えた。ウィールクスの劇的書法、ウィルビーの繊細な抒情がそれぞれ高みを示した。チャールズ1世期以降は「リュート歌(エア)」やヴァース・アンセムへ重心が移り、独自路線は1620年代に終焉した。

出来事

  • 1588: 「Musica Transalpina」出版
  • 1597: モーレー「マドリガル入門」
  • 1601: 「The Triumphs of Oriana」
  • 1612: ウィールクス「マドリガーレ集」、楽派の頂点

派生・影響

ダウランドのリュート歌、パーセル世代のオード・アンセム、20世紀英国合唱(ヴォーン・ウィリアムズ、ブリテン)が、自然描写と詩情の伝統を継承した。

音楽的特徴

楽器4〜6声合唱、リュート

リズム短い有節形式、明朗な舞踏的拍節

代表アーティスト

  • ジョン・ダウランドイングランド · 1590年〜1626
  • トーマス・モーレーイングランド · 1590年〜1602
  • トーマス・ウィールクスイングランド · 1597年〜1623

代表曲

日本との関係

日本では合唱団や古楽アンサンブルのレパートリーとして親しまれている。英語で歌えるため、ラテン語や古フランス語の作品より取り組みやすい面もある。大学合唱、声楽アンサンブル、ルネサンス音楽の入門で扱われることがあり、詩と多声の関係を学ぶ教材にも向いている。

初めて聴くなら

入口は「Now Is the Month of Maying — トーマス・モーレー (1595)」。春の明るさと軽いリズムが分かりやすい。より技巧的な記念作品として「As Vesta Was from Latmos Hill Descending — トーマス・ウィールクス (1601)」、言葉の絵画的な扱いを知るなら「Fair Phyllis I Saw」もよい。

豆知識

イギリス・マドリガルは、しばしば家庭で歌うための社交音楽でもあった。現在の合唱曲として聴くと演奏会向けに感じるが、当時は楽譜を囲み、複数人で声を合わせる知的な娯楽でもあった。

影響・派生で結ばれたジャンル

ジャンル関係図1530年代1580年代イギリス・マドリガル楽派イギリス・マドリガル楽派マドリガーレマドリガーレ凡例派生影響同系統
凡例
派生影響同系統
イギリス・マドリガル楽派を中心とした近傍図。中心と直接結ばれるエッジが強調表示されます。

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