ドゥルパド
北インド古典音楽最古層の声楽様式で、神への讃美詩を瞑想的に歌い上げる。
まずはここから
ひとことで言うと北インド古典音楽最古層の声楽様式で、神への讃美詩を瞑想的に歌い上げる。
まずはこの曲からDagar Brothers — Raga Bhairav (Dagar Style) ▶ YouTube
代表的な人Dagar Brothers
どんな音か
ドゥルパドの音は遅い。まず「アーラープ」と呼ばれる即興的な導入部が始まり、タンブーラ(4弦のドローン楽器)だけを伴奏に、歌い手がラーガの音階を一つずつ確かめるように歌い上げる。30分以上かけてアーラープが発展し、テンポは徐々に上がっていく。パクァワジュ(両面太鼓)が加わる「ダマール」や「ドゥルパド」の楽節に入ると、リズムと旋律が絡み始める。声は胸腔から出す深く太い響きで、マイクを通してもホールに満ちるような音量と倍音がある。装飾音は最小限で、長い音符が空気を振動させながら変化する様子が音楽の主役だ。GundechaブラザーズはMewatiガラーナ(流派)の様式を継承しており、二人の声が低音域でユニゾンになる瞬間が特に印象的。
このジャンルを特徴づける代表的なリズムパターン。再生ボタンでループ再生し、下のリズム譜で今どの拍が鳴っているかを確認できます。
聴きどころ
アーラープの最初の数分、声が「サ(主音)」に向かって何度も戻ってくる引力を確認する。その都度少し離れた音程に踏み込んでは戻る、という往復がラーガの「形」を作っていく。Gundecha Brothersの『Raga Yaman: Alap and Dhamar』(2000年)ではアーラープが十数分続いてからダマールへと移行するが、その移行の瞬間にリズムが生まれる「産まれる感覚」を体験してほしい。音量は低くても聴けるが、倍音の豊かさを感じるには中程度以上の音量が必要。
初めて聴くなら
Dagar Brothersの『Raga Bhairav (Dagar Style)』(1968年)から。バイラヴ・ラーガは早朝に歌われる荘厳なラーガで、ドゥルパドの瞑想的な側面がよく現れている。30分以上あるが、最初の10分だけでも連続して聴くことで、この音楽が「静止」ではなく「超スローモーションの動き」であることが体感できる。
代表アーティスト
- Dagar Brothers
- Gundecha Brothers
代表曲
- Dagar Brothers — Raga Bhairav (Dagar Style) (1968)
- Dagar Brothers — Raga Yaman Dhrupad (1968)
- Gundecha Brothers — Raga Bhairavi (1995)
もっと見る(あと1件)
- Gundecha Brothers — Raga Yaman: Alap and Dhamar (2000)
生まれた背景
ドゥルパドは北インド古典音楽の最も古い声楽様式の一つで、15〜16世紀のグワーリヤル宮廷(現マッディヤ・プラデーシュ州)で理論的に体系化されたとされる。ムガル帝国アクバル大帝(在位1556〜1605年)の宮廷でタンセンが頂点を極め、神話的な名声を持つ伝説の演奏家として現在も語り継がれる。
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「ダガール・バーニー」「ノーハール・バーニー」など複数の流派(バーニー)があり、それぞれ声の使い方や即興の方法論が異なる。1960〜70年代にジャジア・フセイン・ダガール(Dagar Brothers)がドゥルパドを欧米にも紹介し、世界的な古楽・瞑想音楽ブームとも重なって国際的な聴衆を獲得した。
音楽的特徴の詳細
楽器声、タンブーラ、パカワジ
リズム長大なアーラープ、チャウタール拍節、低音重厚、倍音発声
発展
16世紀ターンセン以降ムガル宮廷音楽の中核となり、4つのバーニー(ガウディヤ・カンダール・ナウハール・ダーガル)に分流した。19世紀以降ダーガル・バーニーの伝承家系が中心となり、20世紀のダーガル兄弟、ザキル・フセインの父アッラー・ラカ、グンデチャ兄弟らが世界的に演奏した。
出来事
- 15世紀: グワーリオル宮廷で体系化
- 1556: アクバル帝、ターンセンを宮廷音楽家任命
- 1968: ダーガル兄弟欧州公演で世界に紹介
- 2013: ドゥルパド・サンスティ国際養成校開設(ボパール)
派生・影響
カヤール、トゥムリ等北インド古典声楽全体の祖型、近年のミニマル音楽・現代音楽(テリー・ライリー、メレディス・モンクら)に倍音発声の影響を与えた。
日本との関係
豆知識
タンセンにまつわる伝説は数多い。「深夜のラーガ(ラーガ・ディーパク)」を歌ったら蠟燭が自然に灯った、「雨季のラーガ(ミャン・マルハル)」を歌ったら雨が降ってきたというものが有名だ。
影響・派生で結ばれたジャンル
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