伝統・民族

ダブケ

Dabke

レバノン/シリア/パレスチナ/ヨルダン / 中東 · 1900年〜

レヴァント(レバノン・シリア・パレスチナ・ヨルダン)の輪舞を伴う祝祭音楽で、足で大地を踏み鳴らして連帯を示す。

どんな音か

ダブケは足で地面を踏み鳴らすことから始まる。参加者が横一列に並び、手を繋ぐか肩を組んで、リーダー(ラーセス)が列の先頭でステップを示す。足が床を「ダ、ダ、ダ」と踏む音が音楽の骨格になり、ダルブッカ(両面陶器太鼓)とミジュウィズ(ダブルリード管)かアルグール(葦笛)がその上に旋律とリズムを重ねる。現代の録音では電子キーボードとシンセドラムが加わることが多い。47SOULのような現代バンドはエレクトロニクスをダブケのリズムに融合させ、「シャムステップ」と呼ぶハイブリッドを作った。ビートは重く反復し、音楽自体よりも踊りの集団行動に奉仕するように設計されている。

生まれた背景

ダブケはレヴァント地域(現在のレバノン・シリア・パレスチナ・ヨルダン)に広く分布する祝祭の輪踊りで、婚礼・収穫祭・共同体の儀礼で演じられてきた。起源は農耕社会の「大地を踏み固める」作業と関連しているという説があるが、文献的な証拠は限られる。20世紀後半にはパレスチナのナショナル・アイデンティティと強く結びつき、ディアスポラのパレスチナ人コミュニティで「我々がここにいる」ことを示す行為として踊られるようになった。47SOULは2013年にヨルダンで結成されたバンドで、ダブケのリズムを電子音楽に組み込み「シャムステップ」として商業化・国際化した。

聴きどころ

47SOULの『ダブケ System』(2015年)ではダルブッカのリズムがどの程度電子的に強調されているかを確認する。生のダブケ録音(伝統的なもの)と比較すると、「足を踏む」音が電子的なキックにどう変換されているかが聴き取れる。アラビア語の歌詞が使うマカーム(音階様式)の旋律は、西洋のメジャー・マイナーと異なる音階を使うことが多く、半音と微分音の間に独特の緊張感がある。

発展

1970年代以降、エル・フナイル、エル・アシキーン、レバノンのナアジ・ジャンマールがバンド化を進め、近年ではレバノン・パレスチナのアラビアン・ナイト・オーケストラがエレクトロ化を行った。47ソウル(ヨルダン・パレスチナ系英国バンド)はダブケと電子音楽の融合で国際的に知られる。

出来事

  • 1970: エル・フナイル結成
  • 1979: パレスチナ系ダブケが民族音楽として公的化
  • 2013: 47ソウル結成
  • 2018: ベルリン・ダブケ・フェス

派生・影響

レヴァント民俗、シリア・ムワシャハ、現代アラブ・エレクトロ、ヒップホップと交差。

音楽的特徴

楽器ミジュウィズ、ターブラ、デルブッカ、声、合唱

リズム10/8と6/8、強い足踏み、輪舞

代表アーティスト

  • 47SOULヨルダン/パレスチナ/英国 · 2013年〜

代表曲

日本との関係

中東音楽全般がそうであるように、ダブケ日本ではほとんど知られていない。在日アラブ人コミュニティの行事で踊られる機会はあるが、日本の音楽メディアに取り上げられることは稀だ。47SOULはワールドミュージックフェスで欧州に多く出演しているが、日本でのライブ実績はごく少ない。

初めて聴くなら

47SOULの『Intro to Shamstep』(2015年)から入る。エレクトロとダブケのリズムが融合した入口として設計されており、2〜3分の短い曲で全体像をつかめる。続けて『ダブケ System』(2015年)へ進むと、ダブケのリズム・パターンがフルに展開される。踊れる空間で聴くと、足が自然に動き出す感覚がある。

豆知識

パレスチナのダブケでは、列の最後尾の人(ドィル)も特別な役割を持ち、リーダーと対応しながら列全体を引っ張ることがある。「ダブケ」という語はアラビア語の「ダバカ(踏む・叩く)」に由来する。レバノン、シリア、パレスチナ、ヨルダンではそれぞれ地域固有のステップとスタイルがあり、どの国のダブケが「本物」かという議論は政治的な緊張を帯びることもある。

影響・派生で結ばれたジャンル

ジャンル関係図1500年代1900年代ダブケダブケアナトリア民俗音楽(テュルキュ)アナトリア民俗音楽(テュルキュ)凡例派生影響同系統
凡例
派生影響同系統
ダブケを中心とした近傍図。中心と直接結ばれるエッジが強調表示されます。

ダブケ の系譜全体図(多段)を見る

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