伝統・民族

アイヌ音楽

Ainu Music

北海道 / 日本 / 東アジア · 1500年〜

別名: Upopo / Yukar

北海道・千島・樺太の先住民族アイヌの伝統音楽。

どんな音か

アイヌ音楽の伝統楽器トンコリ(五弦の竪琴)は、やや乾いた音色で、リズムとしてのパルスがはっきりしている。ムックリ(口琴)は微細な周波数変動を持ち、声道の形態で音色が変化する。ウポポ(女性による円形の踊り歌)は複合的なリズムと、呼応的な歌い方が特徴。OKI DUB AINU BANDによる現代版では、これら伝統楽器がダブやエレクトロニック要素と融合し、新しい音響空間が生成されている。

生まれた背景

アイヌは北海道・千島・樺太の先住民で、独立した文化体系を保ちながら、主に日本国家による統治下に置かれてきた。アイヌ音楽は儀式、恋愛、労働など生活全般に根ざしていたが、明治時代からの『同化政策』により、一度は断絶の危機に直面した。戦後、特に1980年代以降のアイヌ民族運動の高まりのなかで、伝統音楽の復興と再解釈が進められた。

聴きどころ

伝統楽器の音色と、それがどう現代的な音響と融合するか。歌詞のアイヌ語のイントネーション。ドラムやシンセサイザーとのリズムの関係。イヨマンテ(熊の送り出し儀式)という儀式の文脈が、音にいかに反映しているか。

発展

20世紀の同化政策で危機に瀕したが、知里幸恵『アイヌ神謡集』(1923年)、金田一京助らの記録、戦後の萱野茂らの保存活動を経て継承された。1990年代以降はOKI(オキ)らによるトンコリの現代音楽化が国際的注目を集めた。

出来事

  • 1923年: 知里幸恵『アイヌ神謡集』刊行。
  • 1997年: アイヌ文化振興法成立。
  • 2003年: OKI Dub Ainu Bandデビュー。
  • 2008年: アイヌ民族を先住民族とする国会決議。
  • 2020年: ウポポイ(民族共生象徴空間)開業。

派生・影響

現代音楽の素材として用いられ、世界の先住民族音楽連帯運動の中で位置づけられる。OKIのCDレーベル「Tonkori Records」など。

音楽的特徴

楽器トンコリ(五弦琴)、ムックリ(口琴)、声

リズム輪唱(リムセ)、口承叙事詩の節、ムックリの口形変化による倍音

代表アーティスト

  • OKI DUB AINU BAND日本 · 2003年〜

代表曲

日本との関係

アイヌ音楽は近年、先住民文化の再認識とともに、日本のメインストリーム文化でも言及されるようになった。学校教育での紹介も増えており、特に2008年のアイヌ民族決議以降、文化的価値の認識が進んでいる。ただし、深い理解はまだ一般的ではなく、表面的な『珍しい文化』として扱われることも多い。

初めて聴くなら

『イヨマンテの火祭り』OKI DUB AINU BAND(2003年)。このグループはアイヌ文化と現代音楽の融合を図ったパイオニアで、この曲は伝統と現代性が等しくバランスしている。イヨマンテの儀式的背景を学んだ上で聴くと、音の深さがより伝わる。

豆知識

イヨマンテは熊を神として送り出す儀式で、アイヌ文化の中でも最も重要な儀式の一つ。この儀式は昭和時代には途絶しかけたが、文化復興運動のなかで部分的に再現されるようになった。OKI DUB AINU BANDのオキは現代的なアプローチで、従来のアイヌ音楽愛好家からの評価は分かれている。

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日本 · 1500年前後 (±25年)

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