伝統・民族

ネパール民謡

Nepalese Folk Music

ネパール / ヒマラヤ · 1600年〜

別名: Madal-based folk

ネパール各地の民族・地域多様な民謡群で、ニューワール、タマン、グルン、シェルパなど異なる民族が独自の音階・楽器・リズムを保持している。

どんな音か

ネパール民謡は地域・民族ごとに顔が異なる。タマン族の民謡は8拍か16拍のサイクルにのせてサラギ(弓奏弦楽器)の悲しげな音が流れ、マダル太鼓がなめらかに打ち込まれる。ニューワール系は竹製フルートと手太鼓を組み合わせ、より速いテンポで田植えや祭りの躍動感が生まれる。全体的に開放弦を多用する楽器が多く、共鳴の余韻が長く残る。歌唱は鼻腔を利用した独特の声質が特徴で、高い音から低い音へとスライドする。

生まれた背景

ネパールはヒマラヤ山脈の南斜面に位置する多民族国家で、高地、中腹、低地の異なる風土に応じて音楽文化が発達した。タマン族は山間部で羊飼いと農業を営み、そのリズムと歌は労働や祭礼に根付いている。ニューワール族はカトマンズ盆地の古い都市文化を持ち、より複雑な楽器編成を発展させた。シェルパ族はヒマラヤの高地に定住し、結婚式や儀式の中で音楽を守ってきた。どの民族もイスラムやヒンドゥー文化との影響を受けながらも、山々に隔てられた独自性を保ってきた。

聴きどころ

マダル太鼓の打ち込みの周期。8拍のビートを感じ取ると、曲全体の骨組みが見える。サラギのスライド奏法に耳を傾けると、西洋音階にはない微妙な音階感覚が聞こえてくる。歌唱の鼻腔フレーズと、楽器の共鳴がどう重なり合うかを追うことで、ネパール音楽の立体感がわかる。

発展

20世紀にはラジオ・ネパールの放送と国営アカデミーの活動で全国的規模で民謡が共有された。クマール・バスネット・タラ・デヴィ・ナラヤン・ゴーパールらの歌手が現代化を進め、近年は若手によるルクサンギー・ロックなど融合ジャンルも生まれた。

出来事

  • 古代: ネパール多民族の歌唱伝統。
  • 1951年: 王政復古とラジオ・ネパール開局。
  • 1960年代: ナラヤン・ゴーパール時代。
  • 1990年代: ルクサンギー・フェスティバル。
  • 2008年: 共和制移行で文化政策再編。

派生・影響

ネパール現代ポップ(ロク・ドハーリ)、海外ネパール人コミュニティの文化的アイデンティティ、ヒマラヤ仏教圏音楽との比較対象。

音楽的特徴

楽器マダル、サーランギー、バンスリ、ダムフ、声

リズムマダルの活気ある二拍子、民族別音階、踊り歌の応答

代表曲

日本との関係

ネパール民謡日本では大きな流行にはなっていない。ただ、ポップ・ワールドミュージック愛好者やタイ・ボウルなどニューエイジ楽器の流行に伴い、部分的な関心が生まれている。登山ブームでネパールへの旅行者が増えたことも、音楽への認識につながっている。

初めて聴くなら

『Resham Firiri』(恋慕の歌)。ロマンティックなテーマで、サラギの悲しげな音色とマダル太鼓の規則的なビートが見事に調和する。昼間の明るい時間に聴くと、山々に反響する音の感覚が想像しやすい。

豆知識

『Resham Firiri』のタイトルは『シルクリボン』という意味で、恋人に渡す象徴的な贈り物を指している。ネパール民謡の多くは自然景観や家族関係、季節行事を詞として持ち、音楽と歌詞が分かちがたく結びついている。

同じ時期・同じ地域で生まれた他のジャンル

ネパール · 1600年前後 (±25年)

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