モサラベ聖歌
イベリア半島の西ゴート時代に発展し、イスラム支配下のキリスト教徒(モサラベ)に伝承された西方ラテン聖歌。
どんな音か
生まれた背景
イベリア半島の西ゴート王国時代(500年頃)から始まるラテン典礼音楽。8世紀のイスラム侵攻後、イスラム支配下のキリスト教徒(モサラベ)に継承された。11世紀のレコンキスタ期にローマ聖歌(グレゴリオ)に置き換えられ、モサラベ聖歌は急速に忘却の彼方へ。20世紀の音楽学者による譜本の再発見と学術的再構成で、現代の私たちは失われた音を部分的に呼び戻すことができるようになった。
聴きどころ
グレゴリオ聖歌との音程の違い。旋律が通常のスケールに従わない瞬間。言葉とメロディの関係の古さ。現代の再現版であることへの自覚(完全な復元ではなく、学問的解釈であること)。
発展
11世紀末、教皇グレゴリウス7世とアルフォンソ6世によりローマ典礼が導入され、モサラベ典礼は周縁化された。1500年頃シスネロス枢機卿がトレド大聖堂内にモサラベ礼拝堂を設立し、写本を印刷整備して伝統を救済した。20世紀後半にも音楽学的研究と典礼書改訂が進み、写本のネウマが完全には解読不能ながら現在も実践が続く。
出来事
- 633: 第4トレド公会議、ヒスパニア典礼を体系化
- 1080: ブルゴス公会議、モサラベ典礼をローマ典礼に置換
- 1500頃: シスネロス枢機卿、モサラベ礼拝堂と典礼書を整備
- 1992: トレド大教区が改訂版モサラベ典礼書を発行
派生・影響
ガリシア・カスティーリャの民俗祈祷歌や中世カンティーガに旋律的影響を残したと推察され、近現代スペイン古楽復興運動の重要な一翼を担う。
音楽的特徴
楽器男声斉唱(無伴奏)
リズム自由リズム、装飾的メリスマ、独自旋法体系
代表アーティスト
- Schola Hungarica
- Ensemble Organum
代表曲
Mozarabic Office for the Dead — Ensemble Organum (1995)
日本との関係
初めて聴くなら
豆知識
モサラベ聖歌の楽譜は限定的にしか残されておらず、ほぼ全ての現代演奏は部分的な推測に基づいている。教会音楽学者の間ではなお議論があり、同じ曲でも演奏団体によって解釈が異なる。イベリア半島の音楽史の闇の部分を照らす音源として、研究価値が高い。
