ラテン・カリブ
ワイノ
Huayno
ペルー/ボリビア/エクアドル / アンデス · 1500年〜
別名: Wayno / Huayño
ペルー・ボリビア・エクアドル高地のアンデス先住民ケチュア・アイマラ系民族の伝統舞踊歌で、植民地以前から続く中核ジャンル。
どんな音か
ワイノの音は、標高3000m以上の高地での『息の薄さ』と『心の哀愁』を融合した音色である。メロディーはペンタトニック(5音階)を基調にしながら、西洋の長調・短調とは異なり、特定の音高『偏向』を持つ。楽器編成は地域によって大きく異なり、アンデス南部(ボリビア)ではサンポーニャ(パイプ・オルガン的フルート群)が主流で、ペルー北部ではケーナ(垂直フルート)やチャランゴ(小型弦楽器)が主役を務める。テンポはBPM60〜100で、比較的遅く、舞踊は『ひきずるような歩み』を特徴とする。歌唱は往々にして高い音域で、『泣きの美学』が支配的。音色全体は『乾燥した風』と『地球の重み』を同時に表現している。
生まれた背景
ワイノはアンデス先住民の古代音楽に由来し、13世紀のインカ帝国時代にも類似の音楽形式が存在したと推定されている。スペイン征服後、キリスト教化される過程でもワイノは『民間宗教音楽』として継承され、植民地時代から近代にかけて、アンデス先住民のアイデンティティの中核を成してきた。20世紀中盤のペルー・ボリビア民族主義運動では『革命の音楽』として政治化され、1960〜1970年代のフォルクローレ・ムーブメントで国際的に紹介された。
聴きどころ
メロディーの『微妙な音階ズレ』(西洋のド・レ・ミではない周波数感)。舞踊の『ひきずるリズム』が楽器のビートとどう関係しているか。歌唱の『泣きの美学』(どのフレーズで音が『落ちる』か)。楽器群(複数フルート、弦楽器)の『ポリフォニック』な複雑性。
発展
1940年代以降のリマ・ラパス都市化でワイノが地方労働者の故郷思慕の歌として商業録音され、ピチタ・カラパチと、ピチー・カラパチが代表となった。20世紀後半のラ・ヌエバ・カンシオン・ペルアナ運動で社会派ワイノが、21世紀のチチャ・ロックでも応用された。
出来事
- 1940s: 都市化と商業録音
- 1968: ペルー左派軍政の文化政策で国民音楽化
- 1985: チチャ・ロック融合
- 2010: ユネスコ無形文化遺産候補リスト
派生・影響
チチャ、サヤ、カポラル、ヌエバ・カンシオンに影響。
音楽的特徴
楽器ケーナ、サンポーニャ、チャランゴ、ボンボ、声
リズム速い2/4、アンデス五音音階、男女輪舞
日本との関係
ワイノはペルー・アンデス文化愛好者の間では比較的高い認知度を持つ。1960〜1970年代のフォルクローレ・ムーブメント時代に日本にも紹介され、その後もワールドミュージック愛好者の間では知られている。ただ、大衆文化での言及は限定的。
初めて聴くなら
ペルーの伝統的ワイノ、またはボリビアのサンポーニャ・グループによる演奏。最初は『地元版』より『国際的編成版』(例えば1960年代のフォルクローレ・アルバム)から入ることを勧める。標高の高い山々が見える朝方に聴くと、アンデス高地の雰囲気が最も伝わる。
豆知識
ワイノは植民地時代の記録では『インカの音楽』として言及され、スペイン当局による『規制対象』とされたことで、その『古さ』が逆説的に証明される。ワイノの音階体系は『アンデス・スケール』として民族音楽学の教科書に記載され、非西洋音楽理論の『代表例』として扱われている。20世紀後半から、ペルー・ボリビアの先住民運動とワイノ音楽は不可分な関係にあり、政治的なアイデンティティ・マーカーとして機能している。
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