ガイダ音楽
ブルガリア・バルカンのバグパイプ音楽。
どんな音か
バグパイプ(ガイダ)の独特な音色が主体。基音は一定で、その上に高い装飾メロディが加わる。ガイダの音は鼻腔を通したようなサウンドで、音量は大きく、のめり込むような質感。リズムは単純な2拍子ないし4拍子だが、装飾音の多さから複雑に聞こえることもある。スタジオ録音であっても、野外のダンスパーティーのような生動感が保たれることが多い。他の楽器が加わることもあるが、ガイダが明確に主役。
生まれた背景
バルカン半島、特にブルガリアでは、中世からバグパイプが民間音楽の中核楽器だった。オスマン帝国統治下でも、この伝統は維持され、各地域でガイダの形式や音色に微妙な違いが生まれた。20世紀には国民的なアイデンティティ・シンボルとなり、ブルガリア政府による民族音楽の記録・保護の対象となった。ソビエト連邦時代を経ても、ガイダの伝統は途切れず、現代でも民俗音楽学校などで学ばれている。
聴きどころ
ガイダの基音の響き。単調に聞こえながらも、微妙な揺らぎや周波数変化がある。メロディラインの装飾。スタッカートやレガートの使い分け。複数のガイダが競い合う時の相互作用。ダンスリズムとしての機能性。
発展
1986年100 Kaba Gaidi(100台のガイダ大編成)が文化的象徴に。Theodosii Spassovらが現代音楽との融合を図る。Voyager 1号機の黄金盤に収録された曲(Izlel ye Delyo Haydutin)も有名。
出来事
- 1977: Voyager 1号機にガイダ曲収録
- 1986: 100 Kaba Gaidi結成
- 1990s: Theodosii Spassov国際進出
派生・影響
他バルカン諸国Gajda(ギリシャ、マケドニア)と連続性。
音楽的特徴
楽器Gaida(バグパイプ)、Tapan太鼓、Kaval笛
リズムPravo Horo(7/8、9/8)、Ruchenitsaなど不規則拍
代表アーティスト
- Valya Balkanska
- Theodosii Spassov
代表曲
- Izlel ye Delyo Haydutin — Valya Balkanska (1977)
Welcome — Theodosii Spassov (1996)
日本との関係
初めて聴くなら
Valya Balkanska『Izlel ye Delyo Haydutin』。ブルガリアの伝説的なガイダ奏者による代表作。ガイダの音色のすべてが詰まっており、初めてのガイダ体験に最適。より現代的で、複数ガイダのアンサンブル的な音を求めるなら、Theodosii Spassov『Welcome』(1996)。ガイダの可能性を現代的に拡張した作品。
豆知識
Valya Balkanska『Izlel ye Delyo Haydutin』は 1977 年に録音された後、1977 年に打ち上げられた NASA ボイジャー探査機のゴールデンレコードに収録された。人類を代表する音楽の一つとして選ばれたこの曲は、西洋音楽史の視点では相対的に無名だが、宇宙からの『地球の声』として永遠に浮遊している。ブルガリアではこのことが国家的な誇りとなった。
