アングリカン詠唱
イングランド国教会で発達した、英語詩篇を四声体ハーモニーで歌う独特の朗唱様式。
まずはここから
ひとことで言うとイングランド国教会で発達した、英語詩篇を四声体ハーモニーで歌う独特の朗唱様式。
まずはこの曲からChoir of King's College, Cambridge — Magnificat (Anglican Chant) ▶ YouTube
代表的な人Choir of King's College, Cambridge
どんな音か
詩篇のテキストを4声部(ソプラノ・アルト・テノール・バス)のハーモニーに乗せて歌う。旋律の骨格は決まっているが、詩篇の各節は音節数が一定でないため、何音節分かを1つの音に「溜め込んで」一気に動く「詠唱音」(reiting tone)が使われる。この部分は音程が変わらず声がまとまって前に進み、フレーズの後半でハーモニーが和音進行として動く。合唱として聴くと、溜まった後に解放されるような動きが交互にやってくる。テンポは説明的でなく、呼吸とテキストの読みに沿って自然に動く。パイプオルガンが薄く支えることが多い。
聴きどころ
一つの詩篇節が始まる冒頭の「溜め」と、後半のハーモニー進行への移行点に耳を向ける。4声部がどう動くかよりも、まずバスの音がどこで変わるかを追うと、和声の骨格が見えてくる。King's College Cambridgeの合唱は録音の質も高く、各声部の分離がはっきり聴ける。大聖堂の残響の中で歌われた録音は、音が壁に反射して次の音が来る前に前の音がまだ漂っている感覚が独特だ。
初めて聴くなら
Choir of King's College, CambridgeによるMagnificat(アングリカン詠唱版)から入るのが最も典型的なスタイルを聴ける。タリスの「If Ye Love Me」(1565年)は4声部の絡み合いが短い曲の中に凝縮されており、アングリカン様式の声楽書法の出発点として聴きやすい。「Spem in Alium」(1570年)は40声部という特殊な編成で、詠唱というより多声部合唱の極点として別の文脈で聴ける。
代表アーティスト
- Choir of King's College, Cambridge
- Thomas Tallis
代表曲
- Choir of King's College, Cambridge — Magnificat (Anglican Chant)
- Thomas Tallis — If Ye Love Me (1565)
- Thomas Tallis — Spem in Alium (1570)
生まれた背景
宗教改革によってイングランド教会(英国国教会)がローマ・カトリックと分離した16世紀、礼拝はラテン語から英語に切り替えられた。グレゴリオ聖歌の伝統をそのまま英語に移すと音節数が合わなくなるため、英語の強弱アクセントに対応した新しい詠唱様式が必要になった。
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タリスやバードらが礼拝用の英語多声音楽を作ったこの時代の蓄積が、後のアングリカン詠唱の基礎になる。17〜18世紀にかけてオックスフォード・ケンブリッジの大聖堂と大学礼拝堂で様式が整備され、「単旋律」から「ダブル詠唱」(2節分を一対の和声進行で処理する)まで複数の形式が定着した。
音楽的特徴の詳細
楽器聖歌隊(SATB)、オルガン
リズム英語詩篇の柔軟な朗唱、四声和声、固定チャント型
発展
17-18世紀にトマス・モーリー、ウィリアム・クロフトらが古典的チャント型を整備、19世紀ロバート・ジャネス、サミュエル・ウェスリーらの作曲で和声的洗練が進んだ。20世紀には英国大聖堂聖歌隊伝統(キングズ・カレッジ、ウィンチェスター等)の世界的録音活動で広く知られるようになった。米国聖公会・カナダ聖公会・日本聖公会など世界中の聖公会共同体で実践される。
出来事
- 1549: 共通祈祷書初版発行
- 1644: ピューリタン革命下で大聖堂聖歌が一時禁止
- 1841: ロバート・ジャネス、現代型詩篇集刊行
- 1928: 米国聖公会改訂祈祷書
派生・影響
現代英語讃美歌・合唱詩篇曲・チョラル・イーヴンソング作品の母胎となり、英国合唱伝統全体の音響的基盤を築いた。
日本との関係
豆知識
アングリカン詠唱は現在もイギリスの大聖堂で毎日の礼拝(Choral Evensong)として生きており、Ely大聖堂やウェストミンスター寺院などでは訪問者も参列できる。ウェストミンスター寺院は1947年のエリザベス2世の結婚式でも同スタイルの詠唱が使われた。
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また、BBC Radioは1926年の開局翌年から定期的にChoral Evensongを中継しており、これは英国放送史上最も長く続くレギュラー番組の一つとされる(BBC Radio 3で現在も放送中)。
影響・派生で結ばれたジャンル
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