伝統・民族

カドンゴ・カム

Kadongo Kamu

ウガンダ / 東アフリカ · 1965年〜

ウガンダ・ブガンダ系民族で1960年代に成立した、アコースティックギター一本(「カドンゴ・カム」=小さなギターひとつ)で長尺の物語と社会批評を歌う叙事歌謡。

どんな音か

アコースティックギター一本を弾きながら、ひとりの歌い手が長い物語を語る。楽器編成の簡素さとは対照的に、歌詞の内容は社会批評・政治・恋愛・悲劇まで幅広い。バガンダ語(ルガンダ語)で歌われ、1曲が10〜20分に及ぶこともある。声はナレーターのように語りかけるが、感情が高まる場面では音程がはっきりする。ギターはコード弾きが基本で、指弾きのパターンが繰り返される。「カドンゴ・カム」とはルガンダ語で「小さなギター一本」を意味し、そのままジャンル名になった。

生まれた背景

1960年代のウガンダ独立期、ブガンダ王国を基盤とする文化が復興する中で成立した。伝統的な吟遊詩人(グリオに相当する職能)の語り物文化と、植民地期に入ってきたアコースティックギターが結びついた。フレッド・マサガジが先駆けとされ、その後パウロ・カフェーロが1990年代に絶大な人気を誇り、国民的存在となった。カフェーロは2007年に急死しており、現在もウガンダ音楽史の象徴的人物として扱われている。

聴きどころ

歌詞が理解できなくても、語りと歌の切り替わりに注目する。物語が盛り上がる場面でボーカルの音程が上がり、ギターのリズムが変わることがある。パウロ・カフェーロの『Walumbe Zaaya』(1995年)は死と運命をテーマにした曲で、声の沈み込むような低音から確認できる。

発展

1980年代に内戦を経てゲラルド・カイロが復興を主導し、「ピエルル・カイロ」名義で道徳訓戒の歌を多く残した。21世紀にはパオロ・ケイブワ、エディ・マサガジ・ジュニアが世代継承を行い、ウガンダ・ヒップホップへの素材提供も行う。

出来事

  • 1965: フレッド・マサガジ録音開始
  • 1971: アミン政権下で歌手亡命
  • 1986: ムセベニ政権成立後の復興
  • 2010: ウガンダ国民音楽として再評価

派生・影響

ブガンダ宮廷音楽エンセグ、現代ウガンダ・ポップ、ボンゴ・フラヴァに影響。

音楽的特徴

楽器アコースティックギター、声

リズム緩やかな2/4、長尺叙事、ルガンダ語

代表アーティスト

  • Fred Masagaziウガンダ · 1960年〜2009
  • Bernard Kabandaウガンダ · 1985年〜
  • Paulo Kafeeroウガンダ · 1992年〜2007

代表曲

日本との関係

日本ではウガンダ音楽自体の認知が低く、カドンゴ・カムを知る機会はほぼない。東アフリカ音楽の専門家や、アフリカ音楽のフェスティバルに関わる人々のあいだで名前が挙がる程度だ。

初めて聴くなら

パウロ・カフェーロの『Walumbe Zaaya』(1995年)を試す。死を擬人化した歌詞とカフェーロの重い声が、言語を超えて感情を伝える。静かな時間に、歌詞の流れを追いながら聴く。

豆知識

パウロ・カフェーロはウガンダで「カドンゴ・カムの王」と呼ばれ、生前は選挙キャンペーンや政治家からのパフォーマンス依頼も多かった。彼の葬儀にはウガンダ全土から数万人が集まったという。現在もカフェーロの曲はウガンダのラジオで頻繁に流れている。

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