バハーイー教音楽
19世紀ペルシア発のバハーイー教において、聖典を多言語で歌う近代的祈祷音楽伝統。
どんな音か
バハーイー教の音楽は特定の「バハーイー様式」があるわけでなく、聖典(バハーウッラーやアブドル・バハーの著作)の言葉を歌にする行為そのものが実践として重視される。ペルシア語・アラビア語・英語など多言語で書かれた祈りや詩が、民族音楽・クラシック・ゴスペルなど書いた人の文化的背景に応じた様式で歌われる。Tom Priceの「Allahu Abha」は英語圏の讃美歌的な和声進行を持ち、ピアノや弦楽器が伴奏する。音楽は礼拝の中心ではなく「集会の精神を高める手段」として位置づけられており、楽器の使用も状況によって異なる。
生まれた背景
バハーイー教は1844年にイラン(ペルシア)で始まり、創始者バーブとその後継者バハーウッラーが新しい宗教の萌芽を打ち立てた。19世紀末から20世紀にかけて中東・インド・欧米に広がり、現在は190以上の国と地域に信者がいる。宗教的な音楽実践は各地域の文化に委ねられており、「公式の典礼音楽」は存在しない。イスラエルのハイファにある国際本部(バハーイー世界センター)周辺でも、多様な文化背景の信者が持ち寄った音楽スタイルが混在している。
聴きどころ
Tom Priceの「Allahu Abha」は英語圏のコーラス的な質感で聴きやすい。「アッラーフ・アブハー(神は最も栄光ある)」というアラビア語の句が英語的な曲に乗るとき、アラビア語の音節が旋律にどう配置されるかに注目すると興味深い。バハーイーの音楽は「様式」より「テキストとの関係」で評価されるので、歌詞の内容を調べてから聴くと理解が深まる。
発展
20世紀後半に米イリノイ州ウィルメット、英ヘイファ等の中心地で多文化的礼拝モデルが整備された。インド・デリーのロータス神殿(1986年完成)など世界の家族神殿で、毎日多言語での聖典朗誦が行われる。米国ではトム・プライス、シャディ・トーレス、ヴァン・ギリヤードらの作曲家が現代バハーイー音楽を発展させた。
出来事
- 1844: バーブ宣教開始
- 1863: バハーウッラー開教
- 1953: ヘイファのアブドゥル=バハー墓廟完成
- 1986: デリー・ロータス神殿開堂
派生・影響
現代多文化的キリスト教讃美歌運動、世界宗教対話運動の音楽実践、近年の越境スピリチュアル音楽分野に共鳴する。
音楽的特徴
楽器声、ピアノ、ギター、地域楽器、合唱(多文化編成)
リズム多言語聖典朗誦、各地域様式の併用、固定典礼なし
代表アーティスト
- Tom Price
代表曲
Allahu Abha (Bahai Hymn) — Tom Price
日本との関係
日本にはバハーイー教のコミュニティが存在し、東京などにバハーイーセンターがある。礼拝の集会では日本語に翻訳された聖典の言葉が歌われることもある。一般的な知名度は低い。
初めて聴くなら
Tom Priceの「Allahu Abha (Bahai Hymn)」は讃美歌的な親しみやすさがあり、バハーイーの音楽の一形態として入りやすい。ただしこれはあくまで一例で、バハーイーの音楽的多様性を代表するものではない。多言語・多様式の聖典歌唱という独自性を理解するには、複数の言語・文化圏の演奏を聴き比べるのが近道だ。
豆知識
バハーイー教の創始者バハーウッラーは自ら多くの詩的な文章を書いており、その言語はペルシア語とアラビア語が混在する。これらの言葉を歌にすることは信者の間で一般的だが、「正式な楽譜」は存在せず、各コミュニティが独自のメロディーを付けることが多い。そのため、同じテキストでも国によって全く異なる曲として歌われていることがある。
