ルネサンス・ミサ曲
ミサ通常文(キリエ、グローリア、クレド、サンクトゥス、アニュス・デイ)を一曲として構成する15〜16世紀の多声声楽形式。
概要
デュファイ世代に通作ミサが定着し、ジョスカン、パレストリーナの時代に頂点を迎えた。定旋律ミサ、模倣ミサ(パロディ・ミサ)、自由ミサなど多様な作曲技法が発達し、対位法と声部書法の最高水準を示した。
背景
15世紀ブルゴーニュ宮廷とローマ教皇庁が二大音楽中心地となり、教会と宮廷の双方で多声ミサが上演された。印刷術の発明(1450年代)と楽譜印刷(ペトルッチ、1501)により楽譜が国際的に流通し、作曲家の名声がヨーロッパ全土に広がる土壌が整った。トリエント公会議の音楽議論はカトリック作曲家に「言葉の聞き取り易さ」という規範を意識させた。
発展
デュファイの「Missa L'homme armé」など定旋律ミサに始まり、オケゲムが対位法的厳格性を高め、ジョスカン・デ・プレが模倣を駆使した知的構築美に到達した。後期ルネサンスではパレストリーナがローマ楽派の規範を確立、ラッススやヴィクトリアが各国の様式を加えた。プロテスタント側ではタリス、バードがイギリス独自の合唱伝統を育てた。
出来事
- 1450年頃: デュファイ「Missa L'homme armé」
- 1501: オッタヴィアーノ・ペトルッチ、最初の活版楽譜印刷
- 1567: パレストリーナ「教皇マルチェルスのミサ」出版
- 1605: ヴィクトリア「死者のためのミサ曲」出版
派生・影響
バロック時代の協奏様式ミサ(バッハ「ロ短調ミサ」)、古典派・ロマン派のミサ(モーツァルト、ベートーヴェン、ベルディ「レクイエム」)へと継承された。20世紀のアルヴォ・ペルトらホーリー・ミニマリズムでも作曲モデルとして参照されている。
音楽的特徴
楽器無伴奏混声合唱(任意で器楽コラ・パルテ)
リズム通作5楽章、模倣対位法、教会旋法
代表アーティスト
- ギヨーム・デュファイ
- ジョスカン・デ・プレ
- ジョヴァンニ・ピエルルイジ・ダ・パレストリーナ
- オルランド・ディ・ラッソ
代表曲
- Missa L'homme armé sexti toni — ギヨーム・デュファイ (1460)YouTube で検索
- Missa Prolationum (1480)YouTube で検索
- Missa Pange lingua — ジョスカン・デ・プレ (1515)YouTube で検索
- Missa Papae Marcelli — ジョヴァンニ・ピエルルイジ・ダ・パレストリーナ (1567)YouTube で検索
- Missa pro defunctis (1605)YouTube で検索