プレインチャント
中世西方教会で歌われた単声・無伴奏の聖歌の総称で、西洋音楽の最古層に位置する。
概要
ラテン語の典礼テクストに自由なリズムで旋律を付けた単旋律の宗教歌。グレゴリオ聖歌を頂点に、アンブロジオ聖歌、ガリア聖歌、モサラベ聖歌など地域ごとに異なる伝統が並立した。教会旋法と中性的な拍節を特徴とし、後の多声音楽の素材となった。
背景
ローマ帝国末期からカロリング朝期にかけて、各地のキリスト教共同体は独自の典礼歌を育てていた。8世紀末のカール大帝による典礼統一政策のもとで、ローマ式典礼が西欧全体へ広められ、各地の旋律が統合・整理された。修道院は写本を介して旋律を継承し、ネウマ譜の発達が記譜の標準化を促した。聖歌は神の言葉を運ぶ器として神学的に重視され、音楽そのものが祈祷行為とみなされた。
発展
9世紀の聖ガレン修道院などでネウマ譜が発展し、11世紀のグイード・ダレッツォによって四線譜とソルミゼーションが体系化された。13世紀には聖歌の旋律をもとに多声音楽(オルガヌム)が積み重ねられ、ノートルダム楽派へとつながる。ルネサンス以降は印刷譜による標準化が進み、19世紀のソレーム修道院による校訂で現代の歌い方が確立した。第二バチカン公会議以降は典礼改革で使用機会が縮小したが、瞑想的音楽として再評価されている。
出来事
- 590: 教皇グレゴリウス1世即位、聖歌伝統の整備が伝説化
- 795: カール大帝のもとローマ式典礼の統一が進行
- 1025年頃: グイード・ダレッツォ「ミクロログス」、四線譜とソルミゼーション
- 1903: 教皇ピウス10世「自発教令」によりグレゴリオ聖歌を典礼の規範に
- 1994: ベネディクト会修道士「Chant」が世界的ヒット
派生・影響
オルガヌム、コンドゥクトゥス、モテットなど中世多声音楽の母体となり、ルネサンスのミサ曲・モテットでも定旋律として用いられた。20世紀以降はホーリー・ミニマリズムや現代宗教音楽の精神的源泉として参照され、Enigmaなどポピュラー音楽でもサンプリングされた。
音楽的特徴
楽器無伴奏の男声斉唱
リズム自由リズム、ラテン語、教会旋法
代表アーティスト
- レオニヌス
代表曲
- Te Deum laudamus (800)YouTube で検索
- Veni Creator Spiritus (900)YouTube で検索
- Kyrie XI 'Orbis factor' (1000)YouTube で検索
- Salve Regina (1100)YouTube で検索
- Dies Irae (1250)YouTube で検索