モテット
中世末期に成立し、ルネサンス〜バロックに至るまで多様な形を取ったラテン語多声声楽の主要ジャンル。
概要
13世紀には聖歌定旋律の上に異なるテクストを重ねるポリテクスト形式として始まり、ルネサンスではミサ通常文以外の典礼テクスト(聖句・詩編)を扱う模倣対位法作品となった。バロック以降は器楽伴奏付き宗教合唱曲を含む広い概念へと拡張した。
背景
ノートルダム楽派のディスカントゥスから派生した初期モテットは、アルス・アンティクア・アルス・ノヴァを通じて世俗化を経験した。ルネサンス期にはトリエント公会議の規範に応えるかたちで「言葉と音の一致」が重視され、ミサと並ぶ典礼装飾の中心となった。プロテスタント圏ではアンセム、コラール・モテットへ翻案された。
発展
ジョスカン「Ave Maria…virgo serena」(c.1485)が模倣対位法の理想形を示し、パレストリーナ、ラッスス、ヴィクトリアらが各地で頂点に達した。バロック期にはシュッツ「シンフォニエ・サクレ」、バッハ「6つのモテット」のように器楽伴奏や複合唱形式へ発展した。19世紀以降はブルックナー、プーランクが新たな作曲モデルを与えた。
出来事
- 1280年頃: モンペリエ写本収録の3声モテット
- 1485年頃: ジョスカン「Ave Maria…virgo serena」
- 1572: タリス「Spem in alium」40声
- 1727: バッハ「Singet dem Herrn ein neues Lied」 BWV225
派生・影響
プロテスタント・モテット(シュッツ)、英国アンセム、近代の宗教合唱曲(ブルックナー、フォーレ、プーランク、ペルト)へ連続的に発展した。
音楽的特徴
楽器合唱(任意で通奏低音、器楽)
リズム模倣対位法、定旋律技法
代表アーティスト
- ギヨーム・デュファイ
- ジョスカン・デ・プレ
- ジョヴァンニ・ピエルルイジ・ダ・パレストリーナ
- オルランド・ディ・ラッソ
- ハインリヒ・シュッツ
代表曲
- Ave Maria…virgo serena — ジョスカン・デ・プレ (1485)YouTube で検索
- O magnum mysterium (1572)YouTube で検索
- Spem in alium (1572)YouTube で検索
- Sicut cervus — ジョヴァンニ・ピエルルイジ・ダ・パレストリーナ (1581)YouTube で検索
- Singet dem Herrn ein neues Lied BWV 225 — ヨハン・ゼバスティアン・バッハ (1727)YouTube で検索