受難曲
聖書の受難物語を題材とする宗教音楽。プレインチャント時代から続く伝統で、バッハの「マタイ受難曲」が頂点。
概要
中世の朗唱受難曲、ルネサンスのモテット受難曲、バロックのオラトリオ受難曲と段階的に発展した。福音史家、イエス、群衆(合唱)の役を分け、レチタティーヴォと自由詩アリアによって聖書のドラマを劇的に再現する。
背景
聖週間の典礼で受難物語を朗唱する習慣は中世初期からあった。プロテスタント宗教改革後、ルター派教会では会衆参加のコラールを核に、受難物語の音楽的表現が拡張された。17〜18世紀には敬虔主義運動が個人の感情的応答を重視し、自由詩による省察的アリアの導入を促した。
発展
シュッツの3つの受難曲(1660年代)が無伴奏様式の頂点、ハインリヒ・シュッツ後期からテレマン、グラウン、そしてバッハ「ヨハネ受難曲」(1724)「マタイ受難曲」(1727または1729)に至るオラトリオ受難曲が作曲された。19世紀後半に再発見されたバッハ「マタイ」はメンデルスゾーンによる1829年の蘇演で爆発的反響を呼び、20世紀ではペンデレツキ「ルカ受難曲」(1966)、ペルト「ヨハネ受難曲」(1982)など現代的再解釈が続く。
出来事
- 1666年頃: シュッツ「マタイ受難曲」「ルカ受難曲」「ヨハネ受難曲」
- 1724: バッハ「ヨハネ受難曲」初演
- 1727または1729: バッハ「マタイ受難曲」初演
- 1829: メンデルスゾーンによるバッハ「マタイ」蘇演
派生・影響
オラトリオ全般、近代の宗教合唱曲、ホーリー・ミニマリズムの宗教合唱(ペルト、グレツキ)に直接影響を与えた。
音楽的特徴
楽器独唱、合唱、管弦楽、オルガン
リズムレチタティーヴォ+アリア+コラール
代表アーティスト
- ハインリヒ・シュッツ
- ヨハン・ゼバスティアン・バッハ
代表曲
- マタイ受難曲(シュッツ) — ハインリヒ・シュッツ (1666)YouTube で検索
- ヨハネ受難曲(シュッツ) — ハインリヒ・シュッツ (1666)YouTube で検索
- ヨハネ受難曲 BWV 245 — ヨハン・ゼバスティアン・バッハ (1724)YouTube で検索
- マタイ受難曲 BWV 244 — ヨハン・ゼバスティアン・バッハ (1727)YouTube で検索