マンデ・グリオ伝統
西アフリカ・マンデ系社会で千年以上受け継がれる世襲口承詩人ジェリ(グリオ)による系譜・歴史叙述音楽。
概要
コラ(21弦ハープ)、バラフォン(木琴)、ンゴニ(琵琶)を基本編成とし、王侯への讃歌や歴史叙述、結婚祝賀などを担う。ジェリは社会階級として血統で継承され、口承で系譜と歴史を保持する「生きた図書館」と位置付けられる。
背景
13世紀のマリ帝国スンジャタ・ケイタの時代に制度化されたとされ、王権の正統性と歴史記憶を音楽家階級が独占的に担う構造が確立した。マンデ社会の階級制ニャマカラの中で職業集団として位置付けられ、ガンビア、セネガル、マリ、ギニア、ブルキナファソに広がる。植民地化と独立後の民族国家形成の中で、グリオは国民的歌手として再定義された。
発展
20世紀後半にトゥマニ・ジャバテはコラを独奏楽器として国際舞台に押し上げ、母親も歌手のサリフ・ケイタは王族出身でありながらアルビノ差別を受けつつ歌の道を切り拓き伝統と階級観を揺さぶった。マンディング・スウィングと呼ばれるバンド編成のポップ化が進み、ワールドミュージック市場の中核ジャンルとなった。
出来事
- 13世紀: マリ帝国成立とジェリ階級の制度化
- 1960: マリ・セネガル独立後、国営アンサンブルが結成
- 1970: 国立アンサンブル・アンステュメンタル・デュ・マリ結成
- 1987: トゥマニ・ジャバテ『Kaira』
- 2006: トゥマニ・ジャバテとアリ・ファルカ・トゥーレ『In the Heart of the Moon』グラミー受賞
派生・影響
ワスル、ブルース(大西洋奴隷貿易を経た系譜論で度々参照される)、マンディング系ポップ、ジャズとのコラボレーションに影響を与えた。
音楽的特徴
楽器コラ、バラフォン、ンゴニ、声
リズムヘテロフォニー、複合拍子、語り歌
代表アーティスト
- Salif Keita
- Ali Farka Touré
- Toumani Diabaté
代表曲
- Kaira — Toumani Diabaté (1987)YouTube で検索
- Soro — Salif Keita (1987)YouTube で検索
- In the Heart of the Moon — Ali Farka Touré (2005)YouTube で検索