ワスル
マリ南部ワスル地方の女性歌手たちが牽引する、狩人歌と憑依儀礼に由来するモダンな民族音楽。
概要
カマレ・ンゴニ(若者の竪琴)とジャンベ、ピックアップを付けたカラバッシュが基本編成で、エレキギターやキーボードも加わる。グリオ階級ではない平民出身の女性歌手が前面に立ち、結婚・出産・社会的不公正を率直に歌うのが特徴である。
背景
ワスルは元来、フラニ系・バンバラ系混住地域で、グリオの世襲制から外れた狩人結社ドンソの音楽が盛んだった。20世紀後半、コウンバ・シディベやサリ・シディベら女性が録音産業に登場し、伝統と決別した独立性の高い表現を確立した。1980年代後半のオウム・サンガレの登場で女性の権利を歌う社会派ジャンルへと結晶化した。
発展
1989年のオウム・サンガレ『ムソルウ』がアフリカ圏でセンセーショナルな成功を収め、続いてラムシ・ディアバテ、ナハワ・ドゥンビアらが国際ワールドミュージックシーンで活躍。狩人音楽出身のカマレ・ンゴニ奏者ヤヤ・ディアラはエレキ奏法を整備し、現在のマリ・ポップの中核となった。
出来事
- 1985: コウンバ・シディベが国営ラジオで定期放送を獲得
- 1989: オウム・サンガレ『ムソルウ』発売
- 1992: オウム・サンガレが米ノンサッチから国際盤発売
- 2003: ラムシ・ディアバテ『Sankaba』
- 2017: オウム・サンガレ『Mogoya』で国際的再評価
派生・影響
マンディング系グリオ音楽、狩人音楽ドンソ、サヘル系ファンク、世界的なフェミニズム・アフリカ音楽の潮流に影響を与えた。
音楽的特徴
楽器カマレ・ンゴニ、ジャンベ、カラバッシュ、エレキギター、声
リズム12/8狩人リズム、女性主導のコール&レスポンス
代表アーティスト
- Oumou Sangaré
- Ramata Diakité
代表曲
- Moussolou — Oumou Sangaré (1989)YouTube で検索
- Sankaba — Ramata Diakité (2003)YouTube で検索
- Mogoya — Oumou Sangaré (2017)YouTube で検索