Amapiano
2010年代の南アフリカで生まれた、ハウスに深い低音と、尾を引く独特の電子打楽器「ログドラム」を乗せたダンス音楽。2020年代、世界のクラブを席巻した南アフリカ発のサウンドだ。
What it sounds like
南アフリカ・ヨハネスブルク周辺発の電子ダンス音楽。テンポはBPM 110〜115ほど。使われる音は、ジャズピアノ風の翳りのある豊かな和音、シンセのベース、シェイカーやハイハットといった細かい打楽器、そして特徴的な「ログ・ドラム」(数秒かけて減衰していく、腹に響く低音のシンセ・パーカッション)だ。曲は5〜8分と長く、歌は少なめで、男女の声による短いフレーズが時おり差し込まれる程度。仕上げでは重低音と打楽器が際立つよう調整され、その低音のうねりが踊り手の体を揺らす。
How it came about
2010年代前半から半ばにかけて、南アフリカのヨハネスブルクとプレトリア近郊のタウンシップ(カトレホン、ソウェト、マメロディなど。発祥地には諸説ある)で、クワイト(1990年代南アで流行したハウス系のダンス音楽)やディープ・ハウス、ジャズを土台に、若い作り手たちの手で生まれた。「アマピアノの王」と呼ばれる Kabza De Small や DJ Maphorisa といった面々が2018年頃から2020年にかけて基本形を固め、2020年のパンデミックの時期にTikTokを通じて世界へ広まった。2022年以降はナイジェリアのアフロビーツとも混じり始める。そして2023年末には南アの歌手 Tyla の『Water』が米国のポップ・ラジオでも流れるヒットとなった。タウンシップのパーティー音楽が、生まれてわずか数年で米ポップ・チャートのど真ん中に立っていた。クラブの外へ、一般のヒット曲の世界へと、アマピアノは抜け出したのだ。
What to listen for
「ログ・ドラム」と呼ばれる、低音シンセが数秒かけて尾を引きながら沈んでいく音。これがアマピアノの心臓部だ。多くの曲でこの音がキックとベースの両方を兼ね、うねりそのものがリズムを生む。次に、ジャズピアノのような翳りのある豊かな和音(専門的には7th・9th・11thといった、和音に響きを足す音を重ねたもの)。そしてシェイカーとハイハットが刻む細かいリズム。曲の頭から2〜3分かけて少しずつ音の層が積み重なっていく作りは、ハウスやテクノと共通する。ポップスのように頭からサビを期待せず、層が揃う数分目あたりまで通して身を委ねたい。
If you only hear one thing
まず1曲だけ聴くなら、Kabza De Small & DJ Maphorisa『Asibe Happy』(feat. Ami Faku、2021)がよい。アマピアノ入門の決定版だ。アフロビーツ寄りの入口なら、Asake『Sungba』(ナイジェリアの巨星 Burna Boy を迎えたリミックス、2022)を選びたい。長尺で浸りたいなら、Kabza De Small のアルバム『I Am the King of Amapiano: Sweet & Dust』(2020)に身を沈めたい。
Trivia
「Amapiano」はズールー語で「ピアノたち」の意味。ズールー語の複数接頭辞 ama- に英語の piano が付いた合成語で、ピアノやコードが主役というこの音楽の核を、名前そのものが言い当てている。「ログ・ドラム」と呼ばれるあの低音シンセは、FL Studio内蔵のFMシンセ・プラグイン『Fruity DX10』のプリセット音色を改造したものから広まったという説が有力で、広めたのはプロデューサーの MDU aka TRP だとされる。以後、共有の楽器のようにシーン全体へ広がっていった。
Hear the rhythm
The signature rhythm pattern of this genre. Press play to loop it, and follow the score below to see which beat is sounding.
Notable artists
- Kabza De Small
- DJ Maphorisa
- Tyler ICU
- Tyla
Notable tracks
- Banyana — DJ Maphorisa (2019)
- Asibe Happy — Kabza De Small (2022)
- Mnike — Tyler ICU (2023)
- Water — Tyla (2023)
- Adiwele — Kabza De Small (2020)
