トルヴェール
12〜13世紀の北仏オイル語圏で、トルバドゥール伝統を引き継いだ宮廷詩人音楽家。
概要
古フランス語による単旋律歌曲を中心に、騎士道恋愛、宗教的主題、政治諷刺など多彩な内容を歌った。シャンパーニュ伯領、アルトワ、ピカルディが活動の中心で、写本に記された旋律は南仏トルバドゥール以上に多く残された。
背景
12世紀後半、北仏の宮廷ではトルバドゥール伝統が翻訳・移植され、十字軍参加貴族や王侯の周辺で詩作が盛んになった。アラスやシャンパーニュの市民層にも詩作が広がり、職業詩人組合「ピュイ」が生まれた。アルビ十字軍で南仏が荒廃すると、抒情詩文化の重心は北仏へ移った。
発展
シャンパーニュ伯ティボー4世(1201〜1253)、ナバラ王として南仏文化との接続を保った。13世紀後半にはアダン・ド・ラ・アル「ロビンとマリオンの劇」(1283年頃)など演劇的作品も生まれ、複声化の試みも現れる。1300年頃までに様式は飽和し、アルス・ノヴァの精緻な多声音楽に主導権を譲った。
出来事
- 1180年頃: コノン・ド・ベテューヌら最初期のトルヴェール
- 1230年頃: ティボー・ド・シャンパーニュ全盛
- 1283年頃: アダン・ド・ラ・アル「ロビンとマリオンの劇」
- 1300年頃: トルヴェール伝統の終焉
派生・影響
アダン・ド・ラ・アルの多声シャンソンはアルス・ノヴァのフォルム・フィクスへ直接つながり、後のシャンソン伝統の基礎となった。中世写本研究を通じて20世紀の古楽復興運動でも盛んに上演されている。
音楽的特徴
楽器声、ヴィエル、リュート
リズム単旋律、定型詩形式、多声化の萌芽
代表アーティスト
- アダン・ド・ラ・アル
- ギヨーム・ド・マショー
代表曲
- L'autrier par la matinee (1230)YouTube で検索
- Pour mon coeur réjouir (1240)YouTube で検索
- Le Jeu de Robin et Marion — アダン・ド・ラ・アル (1283)YouTube で検索
- Robins m'aime — アダン・ド・ラ・アル (1283)YouTube で検索