トルバドゥール
11〜13世紀の南仏オック地方で、宮廷風恋愛詩を作詞作曲した詩人音楽家たちの伝統。
概要
オック語による単旋律歌曲を中心に、騎士道的「フィン・アモール(雅やかな愛)」を主題とした。カンソ、シルヴェンテス、テンソンなど豊富な詩形式を生み、後の西洋抒情詩・俗語声楽全般の祖となった。
背景
11世紀末、十字軍を背景にしたアキテーヌの宮廷文化のなかで、ギヨーム9世(アキテーヌ公)を最初の詩人として現れた。アル=アンダルスのアラブ・アンダルス詩との接触が抒情の様式を刺激したと考えられている。封建制下の宮廷で、貴婦人を理想化する詩は社会的儀礼であり、詩人は雇われ・遍歴する音楽家として宮廷を渡り歩いた。
発展
12世紀にはマルカブリュー、ベルナルト・デ・ヴェンタドルン、ベルトラン・デ・ボルンらが多様な詩形式を確立した。アルビ十字軍(1209〜1229)による南仏文化の壊滅で衰退するが、その伝統はカタルーニャ・北イタリアへ流出し、ダンテに「俗語論」で称えられた。北仏のトルヴェール、ドイツのミンネゼンガーへ転位して中世俗語歌の系譜を作った。
出来事
- 1100年頃: ギヨーム9世(アキテーヌ公)、最初のトルバドゥール
- 1170年頃: ベルナルト・デ・ヴェンタドルン全盛
- 1209: アルビ十字軍開始、南仏文化壊滅へ
- 1290年頃: ジロー・リキエル没、トルバドゥール時代の終焉
派生・影響
トルヴェール、ミンネゼンガー、イタリアの「ドルチェ・スティル・ノヴォ」を経て、ルネサンスのフロットラ、シャンソン、マドリガーレへと流れ込んだ。近代のフォーレ・ドビュッシーらフランス歌曲の文学的源泉とも言われる。
音楽的特徴
楽器声、ヴィエル、リュート、ハープ
リズム単旋律、定型詩形式
代表アーティスト
- ベルナルト・デ・ヴェンタドルン
代表曲
- Non es meravelha s'eu chan — ベルナルト・デ・ヴェンタドルン (1165)YouTube で検索
- Can vei la lauzeta mover — ベルナルト・デ・ヴェンタドルン (1170)YouTube で検索
- A chantar m'er (1180)YouTube で検索
- Kalenda maya (1200)YouTube で検索