リュート歌曲
ルネサンス末〜バロック初頭に流行した、リュート伴奏による独唱声楽曲のジャンル。
概要
英国のジョン・ダウランドを代表として、独唱者と複弦リュートによる親密な世俗歌曲が貴族・市民の家庭で愛好された。フランスでは「エール・ド・クール(宮廷歌)」、スペインでは「ビウエラ歌」と呼ばれ、各地で並行して発展した。
背景
16世紀末、印刷術の普及と中流階級の教養文化により、家庭音楽の市場が拡大した。エリザベス朝〜ジェームズ朝英国の宮廷では憂愁(メランコリー)が美徳とされ、ダウランドの陰鬱な歌曲が文化的アイコンとなった。フランスではアンリ4世・ルイ13世の宮廷で踊りと歌が結合し、宮廷バレエ文化が育まれた。
発展
ダウランド「First Booke of Songes」(1597)が決定版様式を確立し、1610年頃まで英国で隆盛、その後はパーセル時代の独唱歌へ橋渡しされた。フランスではバラール、ボエセが「エール・ド・クール」を出版し、リュート伴奏から通奏低音伴奏へ移行した。スペインのビウエラ歌(ミラン、ナルバエス)はギター歌曲伝統に発展した。
出来事
- 1536: ルイス・ミラン「El Maestro」、ビウエラ歌
- 1597: ダウランド「First Booke of Songes」
- 1608: ピエール・ゲドロン、フランス宮廷エール
- 1612: ジョン・ダウランド、コペンハーゲン宮廷へ
派生・影響
通奏低音独唱曲(モンテヴェルディの「アリア」、フランス・カンタータ)と17世紀のクラシック・ギター歌曲、19世紀のリート(シューベルト)に至る独唱声楽伝統の遠い源流である。
音楽的特徴
楽器声、リュート(または通奏低音)
リズム有節形式、繊細な装飾
代表アーティスト
- ジョン・ダウランド
- トーマス・モーレー
代表曲
- Come Again, Sweet Love — ジョン・ダウランド (1597)YouTube で検索
- Flow My Tears — ジョン・ダウランド (1600)YouTube で検索
- Lachrimae Pavan — ジョン・ダウランド (1604)YouTube で検索
- In Darkness Let Me Dwell — ジョン・ダウランド (1610)YouTube で検索