アザーン(礼拝の呼び声)
イスラム教の礼拝時刻を告げる、ムアッジン(呼び手)による声の伝統。
概要
1日5回の礼拝時刻に、モスクの尖塔(ミナレット)から肉声で呼ばれる定型句。アラビア語の決まった文句を、地域ごとに固有のマカーム旋法と装飾で歌い上げる。神学上は朗誦伝統に近く、楽器を一切伴わない単独男声の音響実践である。
背景
預言者ムハンマド時代に、信徒ビラール・ブン・ラバーフが最初のアザーンを呼んだとされる。礼拝の時刻通知という実用的役割と同時に、共同体の生活時間を信仰の声で結ぶ社会的・象徴的機能を担う。
発展
中世以降、エジプト・トルコ・北アフリカ・ペルシア・南アジア・東南アジアそれぞれに独自の旋法と様式が発達し、トルコ古典マカーム由来のオスマン様式は東欧バルカンまで広まった。20世紀以降はラウドスピーカーや録音再生による国家標準化も進んだが、地方共同体の口承的多様性も残る。
出来事
- 622: 預言者ムハンマドのメディナ移住期にアザーン制定(伝承)
- 9世紀: マカーム化したアザーン様式が東地中海で発達
- 1979: イスタンブール・スルタンアフメト・モスクのアザーン録音が世界普及
- 2018: イスラム協力機構、サウジ式・トルコ式の地域差を文化遺産として認定
派生・影響
アラブ古典声楽・スーフィー音楽・ナシードに音響的影響を与え、近年は世俗音楽でもサンプル素材として用いられる(感受性ある扱いが必要)。
音楽的特徴
楽器独唱男声(無伴奏)
リズム自由リズム、地域別マカーム、装飾的メリスマ
代表曲
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