Hardstyle
ひずませて尾を引く極太のキック(バスドラム)が地を這う場面と、突き抜けるメロディが歌い上げる聴かせどころが、交互に押し寄せる。2000年ごろオランダで生まれ、屋外フェスの大音響で何万人もを跳ねさせるために設計されたダンス音楽だ。
What it sounds like
テンポはおよそ150 BPM(おおむね140〜155)。中心にあるのは、ひずませた巨大なキックだ。一拍ごとに鳴るこのキックの裏拍にはベース音を置くが、キックが鳴る瞬間だけそのベースの音量を自動で絞る(サイドチェインという仕組み)。こうしてキックとベースが同じ低い音域で交互に鳴り、低音全体が弾むように動く。キックとベースが組になって弾むこの「リバースベース」と呼ばれるパターンが、ハードスタイルの骨格をつくる。そこへ、曲によって明るくも切なくも転ぶ高音のシンセ・リードと、攻撃的な英語の短いヴォーカル・サンプルが重なる。曲の長さは4〜6分で、「イントロ・ブレイクダウン・ドロップ」を繰り返す構成が定番。音作りは、屋外フェスの大型音響での再生を意識し、重低音と高音をくっきり際立たせている。
How it came about
2000年代初頭、オランダを中心に(一部ベルギーやイタリアでも)、ハードコア(ガバ)シーンがテンポを落として角を取っていく過程で生まれた。ハードトランス/ハードハウスとガバの橋渡しとして始まり、2005年前後に150 BPMの歪んだキックを軸とする現行サウンド(ヌースタイル/nu-style)へ移行した。Headhunterzを筆頭とするプロデューサー陣はこの路線で2007〜2009年ごろに全盛を築き、フェス運営のQ-Danceがこれを表舞台へと押し上げた。2010年前後にはQ-Dance主催のフェス(Defqon.1やQlimax)が世界的な規模に成長し、ここでハードスタイルは一気に「ヨーロッパの若者が集まるフェス音楽」として定着した。やがてジャンルは二手に枝分かれする。一方はより激しくひずませた「ロウスタイル(Rawstyle)」で、Radical Redemptionらが牽引する形で2010年代前半に広まった。もう一方は明るくメロディー重視の「ユーフォリック・ハードスタイル(Euphoric Hardstyle)」だ。現在もオランダ、ベルギー、ドイツ、北欧、オーストラリアで大型フェスが定期開催されている。
What to listen for
聴きどころは、静かに盛り上げる「ブレイクダウン」でメロディアスなシンセが歌い上げ、一気に音が爆発する「ドロップ」でひずんだキックが戻ってくる瞬間だ。この落差が快感の中心になる。ドロップに入ったら、キックの裏拍で弾むベース音(リバースベース)に耳を澄ませてほしい。キックとベースが交互に鳴って、低域が前後に行き来するのが聴き取れる。小節を数えると、ブレイクダウンもドロップもきっちり決まった間隔で訪れることに気づくはずだ。
If you only hear one thing
まず1曲だけ聴くなら、ひずんだキックとリバースベースの基本形が詰まったProject Oneから。これはHeadhunterzとWildstylezが組んだユニットで、『Project One』はユニット名と同名の2008年のアルバム。収録曲『Life Beyond Earth』あたりが分かりやすい。次に「泣きのメロ」の王道として、Brennan Heart & Jonathan Mendelsohn『Imaginary』(2013)を。ヴォーカルが歌い上げる明るく高揚するタイプの代表格だ。より激しい最新形ロウスタイルへの入口には、Radical Redemptionのアルバム『The Road to Redemption』(2017)から。容赦なく歪んだキックの威力を体感できる。
Trivia
ハードスタイルの「リバースベース」の源流は、もとはハードトランスのベース手法にあり、2000年代前半の初期ハードスタイル(Scantraxx/Fusion系)で確立されたとされる。一説には、強くひずませたキックの長く伸びる余韻が低域を埋めてしまうのを、その余韻自体を裏拍の弾むベース音として組み込むことで逆手に取った、とも言われる。失敗を逆手に取った末の工夫が、ジャンルの看板の音になった。
Notable artists
- Showtek
- Headhunterz
Notable tracks
- FTS — Showtek (2007)
- Power of Mind — Headhunterz (2008)
- Sacrifice — Headhunterz (2009)
- Dragonborn — Headhunterz (2010)
Megaboost — Showtek (2008)
