WorldMusic

Electronic & Dance

Future Bass

Australia · 2014–present

2010年代半ば、オーストラリアのFlumeを震源にSoundCloudから広がったメロディアスなダンス系ポップ。丸く弾むシンセと、サビで急にビートが半分のテンポに落ちるゆったり感が持ち味だ。

What it sounds like

速いのに、なぜか走らない。それがこの音楽の不思議なところだ。テンポはBPM130〜160とかなり速いのに、サビ(曲が最も盛り上がる部分=ドロップ)に入るとドラムの刻みが半分の速さになり、打楽器もまばらにしか鳴らないため、体感はぐっとゆったりする。主役は、ギターやハープを爪弾いたような、丸く弾む音色のシンセ——「プラック(pluck)」だ。もう一つの軸は、ギザギザした倍音を含む音(ノコギリ波)を何層も重ね、少しずつ音程を揺らして和音(コード)として鳴らした分厚い音色で、これを「スーパーソー(supersaw)」と呼ぶ。そこに、歌声の一節を細かく切り刻んで(多くはピッチを上げて)音程を変えて並べ直したサンプルが、もう一つの楽器のように差し込まれる。低音域には体で感じるような超低音(サブベース)が敷かれ、全体は明るくクリアにまとめられる。クラブでDJが繋ぐための長いイントロは持たず、一つの大きなサビを軸にした3〜4分の構成で、ラジオでもかけやすい。サビではメロディアスなシンセ・リードが歌い上げる。

How it came about

2012〜14年ごろ、ネット上の音楽共有サービスSoundCloudに集まったプロデューサーたちの中から生まれた。ダブステップやEDMトラップを土台に、Rustie、Hudson Mohawkeら英国のベース・ミュージック(よりノイジーで実験的な先駆け)の流れを汲んでいる。オーストラリアのFlumeが『Holdin On』(2012)などで方向性を決定づけ、その後MarshmelloやIlleniumらがフェス向けの華やかなサウンドへ広げて、2010年代半ばから後半にかけて商業的なピークを迎えた。日本では、ネットレーベルMaltine Recordsに集まったbo enやTomgggらがその土壌を作った。そこからSnail's HouseやYunomiが、より柔らかくアニメ的な「kawaii future bass(かわいいフューチャー・ベース)」という派生を生み出し、アニメやゲームの音楽を通じて広まった。現在は商業的なピークを過ぎたが、メロディアスなEDMの一つの基本形として残っている。

What to listen for

第一の聴きどころは「サイドチェイン」という処理。バスドラム(低音の太鼓)が鳴る瞬間だけ他の音がすっと小さくなる手法で、これが強くかかると曲全体が膨らんだり縮んだりするように波打って聴こえる。サビで歌い上げるシンセ・リードのメロディも華やかだ。そして、歌声を細かく刻んで並べ直したヴォーカル・サンプルが、もう一つの旋律として絡んでくる。元の歌詞がうっすら聞き取れるのに別の音楽になっている、その手触りに耳を澄ませたい。

If you only hear one thing

1曲だけ聴くなら、Flume『Holdin On』(2012)。刻んだ歌声を主旋律に据えた最初期の一曲で、フューチャー・ベースの起点。フェス全盛期の派手な極点を知るなら、Marshmello『Alone』(2016)、Illenium『Take You Down』(2018)。日本のアーティストから一曲選ぶなら、Snail's House『Pixel Galaxy』(2017)。

Trivia

Flumeはオーストラリア出身で、21歳でデビューアルバムを発表した。シドニーの自室で制作を始め、ノートPC1台で完成させたこのアルバムが世界的にヒットし、高価なスタジオを使わず自室で曲を作る「ベッドルーム・プロデューサー」の代表例となった。なお「Future Bass」という呼び名自体は、2010年前後からSoundCloud界隈で使われ始めた緩い言葉で、「トラップの先を行くもの」「ベース・ミュージックをよりメロディアスにしたもの」といったニュアンスで広まった。

Notable artists

  • Diplo2003–present
  • Flume2010–present
  • RL Grime2011–present
  • Marshmello2015–present

Notable tracks

Related genres

Other genres from the same place and era

Australia · around 2014 (±25 years)