Cajun Music
ルイジアナの湿地帯で踊るための、ボタン式アコーディオンとフィドルが2拍子を刻むフランス語のダンス音楽。
What it sounds like
米国ルイジアナ州南西部の、フランス系アカディアン(ケイジャン)コミュニティのダンス音楽だ。ダンスホールでカップルが組んで踊ることを前提につくられている。蛇腹を押し引きするボタン式アコーディオンとフィドル(ヴァイオリン)、それにトライアングルを核に、ギター・ベース・ドラムが加わる。リズムは基本的に二つ。「ターン・タッ・ターン・タッ」と弾む2拍子のツー・ステップと、ゆったり3拍子で揺れるワルツだ。テンポは1分間に120〜180拍とやや速い。歌い手は男女を問わず、17世紀のフランス語が古い形のまま残り、そこへ英語が混じったケイジャン・フランス語を使う。歌詞は失恋、田舎の暮らし、酒、家族といった身近な題材が多い。
How it came about
1755年、カナダ大西洋岸の沿海諸州(現在のノヴァスコシア州など)にあったフランス植民地アカディアで、フランス系移民がこの地を支配したイギリスによって追放された。「グラン・デランジュマン(Grand Dérangement)」と呼ばれる大規模な強制移住で、その一部がルイジアナの湿地帯に定住する。「Acadian(アカディアン)」が訛って「Cajun(ケイジャン)」になった。19世紀から20世紀前半にかけて、フランス民謡とフィドルの伝統に、ドイツ系移民のアコーディオン、米国南部のブルース、アフリカ系クレオール(ルイジアナの黒人系住民)のリズム感覚、近隣テキサスのスイングバンドが混ざってケイジャン音楽が成立する。最初の商業録音は1928年、Joseph FalconとCleoma Breauxによる『Allons à Lafayette』だった。戦後はIry LeJeuneらが現代様式の土台を築き、1970年代にはアコーディオン奏者Michael Doucet率いるBeauSoleilが復興運動を起こし、ケイジャン音楽を国際的な舞台へ押し上げた。その音はいまも地元のダンスホールで鳴り続けている。なお、ザディコ(Zydeco)はケイジャンとアフリカ系ルイジアナ・クレオールが混じって派生した、いわば姉妹のような音楽だ。
What to listen for
ボタン式アコーディオンは、蛇腹を押すか引くかで出る音が変わる。だからリフには独特の揺れと弾みが生まれる。フィドルのダブル・ストップ(2弦を同時に鳴らす奏法)にも耳を澄ましたい。トライアングルが「チンチンチン」と鳴り、拍を刻んで踊りやすくしている。聴きどころは、フィドルとアコーディオンの音程がぴたりと揃わないところだ。そのわずかなきしみこそが、この音楽特有の物悲しさを生んでいる。そして歌われるのは、いまのパリが忘れてしまった母音だ。
If you only hear one thing
古典なら、Iry LeJeune『The Definitive Collection』。1950年代録音の至宝だ。リバイバル世代なら、躍動感あふれるBeauSoleil『L'amour ou la folie』(1997)と、土臭く骨太なSteve Riley & The Mamou Playboys『La Toussaint』(1995)を聴き比べてみてほしい。
Trivia
ドイツ製の蛇腹アコーディオンは19世紀後半にルイジアナへ流入し始め、1900年ごろにはケイジャン音楽の中心に座った。広めたのはドイツ系ユダヤ人商人の流通網だ。当初は古参のフィドル奏者に嫌われたが、20世紀半ばには一転して花形楽器になった。もうひとつ、有名な取り違えがある。映画『脱出(Deliverance)』(1972)で知られるバンジョーの掛け合い演奏『Dueling Banjos』は、実はケイジャンではなくブルーグラスの曲だ。ルイジアナの奏者たちは半世紀、この取り違えをやんわり訂正し続けている。
Notable artists
- Bebe Carrière
- The Balfa Brothers
- BeauSoleil
Notable tracks
- Jolie Blon — The Balfa Brothers (1965)
- Jolie Blonde — BeauSoleil (1986)
- Parlez-Nous à Boire — BeauSoleil (1986)
L'Anse Aux Pailles — Bebe Carrière (1959)
La Valse de Bambocheurs — The Balfa Brothers (1965)
