イラク・マカーム
バグダードを中心に発達したアラブ古典の特異な伝統で、独自の即興体系と固有の伴奏編成チャルギを持つ。
概要
サンタール(打弦)、ジョーザ(立てフィドル)、ターブラ、リクからなるチャルギ・バグダーディーが、男性独唱者(キャリイズ)の長大な即興を支える。56のマカーム本体と派生体系を持つ。
背景
アッバース朝(750~1258)の首都バグダードの宮廷音楽を起源とし、イスラーム中世の音楽理論家アル・キンディー、アル・ファーラビー、ザカリーヤー・アル・ラーズィーらの理論的伝統と接続される。20世紀にはユダヤ系・キリスト教系・ムスリム系の三宗教が共有する都市音楽として、コーヒーハウス文化の中心にあった。
発展
20世紀のラシッド・アル・クンダルチ、ムハンマド・アル・カバンチ、ユスフ・オメルがチャルギ伝統を制度化した。1948年以降のユダヤ系イラク人のイスラエル移住で多くの音楽家が亡命し、伝承の中心がイスラエル(モシェ・エリヤフ・ラリ家系)とイラクに分裂した。フセイン政権末期と2003年戦争以降の文化破壊からの復興は今も続く。
出来事
- 750: アッバース朝バグダードで宮廷音楽形成
- 1932: カイロ・アラブ音楽会議でラシッド・アル・クンダルチ参加
- 1948: ユダヤ系イラク人イスラエル移住
- 2014: イラク・マカームのユネスコ世界文化遺産候補リスト
派生・影響
ペルシア古典、アラブ・タラブ、ユダヤ系シャシュマカム、現代アラブ・ジャズと交差。
音楽的特徴
楽器サンタール、ジョーザ、ターブラ、リク、声
リズム56マカーム、長大即興、フリー拍子と固定拍子の交替
代表アーティスト
- Munir Bashir
代表曲
- Improvisations on Iraqi Maqam — Munir Bashir (1971)YouTube で検索