アズマリ
エチオピア高原の世襲的吟遊詩人アズマリが、マシンコ(一弦擦弦)とクラール(琴)で即興的に風刺・恋愛・歴史を歌う伝統。
概要
10音音階キニットの五つのモード(ティザータ、バティ、アンバセル、アンチホイ、ティザータ・マイナー)を行き来する旋律と、観客に向けた即興の風刺(コフィット)が特徴。アズマリ・ベットと呼ばれる小規模な飲食店が主な演奏場所。
背景
アズマリは中世以来、低身分の音楽家階層として宮廷と村落を往来し、王侯への讃歌と批判の両方を担った。皇帝制度・正教会・農村社会の三角形の中で、機知と諷刺を許容される稀有なポジションを得た。植民地化を免れたエチオピアでも、20世紀の帝政崩壊・デルグ社会主義・現代政府の下でアズマリの社会的地位は揺らぎ続けた。
発展
1960~70年代の都市化でアディスアベバのアズマリ・ベットが観光化し、世俗的なナイトクラブのエンタテインメントへ転じた。1990年代以降、伝統演奏家アスナケッチ・ウォルクや、フィキミマリャム・ゲブルー、若手のテレフェ・テスファイがエチオ・ジャズや現代コンテンポラリーと交差した。
出来事
- 1855: 皇帝テオドロス2世期、宮廷に複数のアズマリ
- 1974: 帝政崩壊・デルグ革命でアズマリ・ベットの一部閉鎖
- 2000: フィキミマリャム・ゲブルー欧州初公演
- 2018: アディス・アベバでアズマリ復興運動
派生・影響
エチオ・ジャズ(ムラトゥ・アスタトゥケのキニット利用)、エチオピア正教会音楽、現代エチオ・ポップに影響。
音楽的特徴
楽器マシンコ、クラール、ケベロ太鼓、声
リズムキニット5モード、即興風刺、3/4と6/8の交替
代表アーティスト
- Asnaketch Worku
代表曲
- Tezeta — Asnaketch Worku (1972)YouTube で検索